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小林可夢偉、約束を果たしたF1復帰。
この時を見据えた特別な“準備”とは。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2014/01/22 12:00
2012年の日本グランプリで表彰台に上った時の可夢偉。この雄姿が再び鈴鹿の地で見られることを期待したい!
今季F1のレギュレーション変更に備えていた可夢偉。
'12年の年末にF1のシートを喪失した可夢偉は、それから約3カ月後の'13年3月11日に、スクーデリア・フェラーリの一員として、準ワークスのAFコルセからWEC(世界耐久選手権)に参戦することを発表。F1の表舞台からいったん姿を消す決断を下した。
それでも、可夢偉の心の中には、常にF1があった。
「WECはチームメイトと2人で1台のクルマに乗る耐久レースだけど、僕はずっと自分用のセッティングをしませんでした。相方が満足するようにセッティングされたクルマにあえて乗ることで、自分のドライビングの幅を広げるためです。というのも、F1は'14年にレギュレーションが大きく変わるので、それにすぐ対応することが必要。この一年はいい経験になったと思うし、いままで以上に強い自分で帰って来れる自信がある」
WECでもしっかり結果を出したのだが……。
結局、可夢偉が所属したフェラーリは、WEC・GT部門のチームとドライバー、そしてマニュファクチャラーすべてのタイトルを獲得。タイトルはいずれもAFコルセチームの可夢偉が直接手にしたものでこそないが、フェラーリの一員としての重責は見事に果たしたといえる。
それでも、フェラーリが9月に発表した'14年のF1ドライバーラインアップに可夢偉の名前はなかった。
その後もマクラーレン、ウイリアムズ、ロータス、フォース・インディア、ザウバーと続々とシートが埋まっていった。
F1復帰への道が遠のきそうになりながらも、可夢偉はあきらめなかった。それは可夢偉は自分の夢以外にも、大勢の夢を背負って歩んでいたからである。