セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
サンシーロで見せた初ゴール。
本田圭佑「ミランの10番」への第一歩。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/01/16 11:55
2試合目にしてミランでの初ゴールを決めた本田圭佑。入団会見でも、ゴールへの欲を隠さなかっただけに、今後も貪欲に狙っていく姿が見られるだろう。
俺が10番だ。本田のプレーがそう言っていた。
前半最後の攻撃でパッツィーニに出したスルーパスの時には厳しい表情も見せた。前半終了の笛が鳴ると同時に、本田はパスに追いつけなかったパッツィーニを捕まえ、叱責するように何事か要求した。“なあなあ”では終わらせない。3点目を取りにいくのだ。
後半開始早々の2分、MFモントリーボが得意のミドルシュートを放つ。スペツィアのGKレアリは2部で経験したことのない弾道に怯み、前にこぼした。
そのゴール前へ、本田が走りこんでいた。左足で強く蹴りこんだ。
俺が10番だ。本田のプレーがそう言っていた。
ロッソネーロ(赤・黒)のユニフォームをまとった日本人MFは、その後も後半19分に交代するまで、パッツィーニへ絶好のアシストパスを通したり、エリア内で惜しいシュートを放ったり、見せ場を十分に作った。
後半ロスタイムに1点を返されたが、途中出場選手による試合運びも危なげなく、ミランは3-1でコッパイタリア準々決勝進出を決めたのだった。
試合後、暫定監督タソッティは、大任を果たした安堵の表情で本田を労った。
「彼はフィジカル・コンディションを取り戻している最中だ。現段階でのコンタクトプレーは怪我の危険もあるし、プレーさせるのは60分間に留めた。フル出場するにはもう少しかかると思うが、今日は初ゴールの他にもいいプレーを随所に見せてくれた」
約9カ月ぶりに公式戦ゴールを挙げたパッツィーニも「まだミランに来て日が浅いし、言葉の点で苦労していると思うけど、今日はよくやったと言いたい」と新チームメイトの初得点を祝った。
ミランの公式スーツに身を包んだ本田は、誰よりも先にミックスゾーンを足早に通り過ぎた。“俺は結果を出した。後はそちらで好きなように書いてくれ”とでも言わんばかりに。
セードルフが求める“ミランの10番”の理想像へ。
試合中、本田が微妙な位置修正を施して、ボールを左右に捌き始めたとき、ほんの数年前までサンシーロを沸かせていた先々代の10番の姿がダブって見えた。
彼は派手さの薄れたキャリアの円熟期に入ると、チームの黒子役になって攻撃を操った。万能MFセードルフは、サッカーインテリジェンスの塊だった。
新監督セードルフは、15日夕方にミラノ入りした直後、サンシーロに駆けつけ、これから指揮する古巣の戦いぶりを見守った。
今週末のベローナ戦から、いよいよセリエA後半戦が始まる。
中3日での連続先発は不明だが、本田はゴールという結果を出して、10番の後継者であることを先々代に証明した。
セードルフが求める“ミランの10番”の理想像は果てしなく高い。だが、それは本田にとっても望むところだろう。