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日本人選手の言葉で振り返る2013年。
ブンデスで前に進む者、苦しむ者。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/01/16 10:40
長いウィンターブレイクも終わり、まもなく後半戦が始まる。内田篤人のシャルケはCLベスト16でレアル・マドリーと対戦。バロンドール獲得で勢いに乗るロナウドを、対峙する内田は止められるか。
ウインターブレイクを終え、まもなく2014年のブンデスリーガでの戦いが始まる。
日本人選手たちはどのような想いを胸にW杯イヤーを戦うのだろうか。そのヒントは昨年の彼らの姿にあるはずだ。'12-'13シーズンの後半戦と'13-'14シーズンの前半戦が行なわれた、2013年の日本人選手の印象に残る言葉を紹介してみたい。
まずは2013年1月9日。ウインターブレイク中にトルコのベレキでキャンプを行なっていたのが、長谷部誠が当時所属していたヴォルフスブルクだ。ブレーメンとの練習試合が終わった後、公式戦まで時間のあるこのタイミングで、以前から気になっていた質問を長谷部にぶつけてみた。
'12-'13シーズンの開幕からおよそ3カ月ほどがたった時期のことだ。マガト監督から起用されない苦しい日々が終わり、解任されたマガトのあとを引きついだケストナー暫定監督のもとで、試合に出られるようになったにもかかわらず、当時の長谷部は素直に喜びを口にすることがあまりに少なかった。試合に出たあとにも表情をこわばらせたまま、取材に答えていた。
普通に考えれば、試合に出られる喜びを口にしてもおかしくはない。にもかかわらず、堅い表情のままだったのは何故か。そのわけをたずねると、こんな答えが返ってきた。
「3カ月くらいベンチにすら入れなくて、その中で色々考えたり、色々と感じたこともあった。でも、そんなに軽々しくしゃべれる時間じゃなかったから、俺にとってのあの3カ月は。メディアを通じて伝えたいことはたくさんあったけど、でもすべて書けるわけではないでしょう? だから、自分の中でバランスをとって、あのときはそんなにしゃべりたくなかったのかな」
それほどまでの苦しい時間を過ごした長谷部。試合に出れるあてがないまま練習を続けるのは、自分との戦いでもあった。
「ベテラン」として新たな課題と戦う長谷部。
あの発言から1年がたった。
長谷部は、2013年9月にニュルンベルクへと移籍してから、年内最後の試合まで全ての試合でフル出場を果たしている。試合に出るのが当たり前の毎日だ。ただ、その一方で、チームは一度も白星をつかめないまま、シーズンの前半戦を終えることになった。絶対的な主力としてフルタイム出場を続ける長谷部は今、チームを勝たせるために何をすればいいのかという課題と戦っている。(1月15日、右膝外側の半月板をいため、4~6週間の離脱が発表された)
自分との戦いから、チームとの戦いへ。
長谷部はニュルンベルクでの自ら立場を「ベテラン」と評しているが、ベテランと言われる年齢になっても新たな課題が生まれてきて、それと向きあうことが出来る。1人のサッカー選手として、これほど幸せなことはないだろう。
昨シーズンとは異なる環境で異なる課題を前にした長谷部は今後、どんな戦いを見せていくのだろうか。