野球クロスロードBACK NUMBER
菅野、藤浪、大谷、東浜……。
'12年ドラフト1位選手の○と×。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/12/31 08:01
二刀流でキャンプから話題をさらった大谷翔平。来年以降は、その珍しさだけでなく説得力のある数字を残す必要がますます出てくるだろう。
プロにも臆さず、自身の持ち味を発揮した社会人組。
彼らに比べれば、前評判は決して高いとは言えなかった選手たちも、プレーヤーとしての自分を理解していた。
石山は、アマチュア時代から評価が高かったストレートで押す姿勢を崩さず、松永も「自分には真っ直ぐとスライダーしかないので」と語るように、持ち味に加え強気に攻める投球でロッテ投手陣を支えた。増田にしてもシーズン序盤こそ出遅れたが、社会人時代のDVDを見直すなど原点回帰を図り、6月以降は、西武の貴重なセットアッパーとしてゲーム中盤を支配することができた。
人はよく、「アマとプロは違う」と言う。
確かにそうだ。しかし、ドラフト1位に限って言えば、まず「なぜ自分が1位で指名されたのか?」と考えなければならない。そうすれば、おのずと、「今、自分が持つ最高のパフォーマンスを見せれば結果はついてくる」ことに気づくはずだ。一片の疑いを持たず、持っている力を存分に発揮できた人間が、少なくとも1年目は結果を出すことができるのだ。
チャンス期間は終わり、来年以降は完全なる実力社会へ。
この視点で判断すれば、開幕前は「新人王最有力候補」と太鼓判を押されていた東浜には、大きな迷いがあったように感じられる。
プロデビューから2試合連続KOで二軍落ち。「自分のボールが投げられなかった」と東浜自身も語るように、ストライク先行を意識したため投球自体が小粒となり、本来の力が失われてしまった。原因について「投げ込み不足」など反省を述べていたが、ファームで投げ込みや体幹トレーニングと基礎からやり直した結果、一軍復帰を果たしたシーズン終盤には3連勝と意地を見せた。
ドラフト1位で入団した選手の多くは、1年目の自分の立場についてこう語る。
「プロに入れば順位なんて関係ない。でも、ドラフト1位は間違いなく誰よりもチャンスを与えられる」
チャンスを与えられる期間は終わった。
来年以降は完全なる実力社会。プロ野球の世界で生き残るためには、結果を残した「○」の選手たちのように「自分を理解すること」。そして、屈辱をバネとした「×」の東浜のように、「変わること」を受け入れる心意気が、より求められていく。