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<水分はどう取るのが正解?> ウォーターローディングの真実 ~意外と知らない水の常識・非常識~ 

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph byMami Yamada

posted2013/12/11 06:00

<水分はどう取るのが正解?> ウォーターローディングの真実 ~意外と知らない水の常識・非常識~<Number Web> photograph by Mami Yamada
最近ランナーの間でひそかに話題となっている“ウォーターローディング”。
だが、どう行なえばいいのか、どんな効果があるのか、
謎が多いのも事実。その実態を探ってみた。

好評発売中の雑誌Number Do『この秋、知っておきたいランのABC』
ランニング初心者から経験者まで読めばきっと走りたくなる特集から、
専門家が教える水分の取り方のコツを公開します。

 マラソンでは大量の汗をかき、体から水分が失われるため、適切に水分を補給する必要がある。だが、誤解も多いと、日本体育協会の伊藤静夫氏は注意を促す。「汗のかき方や体格など、人によって必要な水の量は変わるもの。なのに、たくさん飲めばいい、飲めば飲むほどよいと思いこんでいる人も少なくない」。そこで、まずは水に関する正しい知識を学んでおこう。

1.レース中の水の飲み過ぎはかえって危険。

 水を飲みたいという喉の渇きは、体内から水が失われてから、かなり遅れてやってくる。そのため、喉が渇く前から給水をするように勧められてきた。しかし、あまり意識しすぎると、逆に水を飲み過ぎてしまうことにもなる。飲み過ぎれば、胃の具合が悪くなるだけでなく、場合によっては低ナトリウム血症=水中毒を引き起こしかねず、さらに重篤の場合には死に至ることもある。トップランナーに水中毒はほとんど見られないが、初心者の中には、レース後、血中ナトリウム濃度が低下している例が意外に多いことが最近の調査研究でわかってきた。

2.初心者ランナーほど水の飲み過ぎに注意を。

 マラソン中の発汗量は1時間に2~3リットルに及ぶともいわれるが、これは大型のエリートランナーが高温下で走った場合。ペースがゆっくりならば、それほど多くの汗はかかない。特に冬のマラソンレースであれば発汗量も少なく、給水にことさら神経を使う必要はない。にもかかわらず、給水所ごとに無理矢理水を飲めば、水の飲み過ぎになる恐れがある。体重の軽い女性の初心者ランナーなどは特に注意したい。

3.走る前より体重が増えたら水の飲み過ぎ。

 水分補給が適切であったかどうかは、レース後の体重変化で知ることができる。発汗量に比べ、給水が不足していれば体重は減るし、給水が多ければ体重は増える。汗のかきかたには個人差があるので、1時間走の練習の前後で体重を測り、自分の体重差を計算しよう。体重の減少量=発汗量だ(給水したらその量を加える)。給水所での補給量は体重が重い人、エリートランナー、気温が高い場合であればカップ半分以上(100~150ml)、体重が軽い人、初心者ランナー、気温が低い場合はカップ半分以下(50~100ml)がおおよその目安。あとは喉の渇きに応じて適宜調整すればよい。

 厳密に発汗量と同じ量を補給する必要はなく、また決して一定量を飲む必要もない。トップランナーでは、その脱水率が5%を越えることも珍しくないが、市民ランナーなら脱水率が2%以内におさまれば適切な水分補給であったと判断してよい。なお、脱水率は体重減少量÷走行前の体重×100で計算する(飲水量は加えない)。

【次ページ】 4.マラソンのレース中は何を飲むべき?

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#伊藤静夫

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