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力強い経営理念が強いチームを作る!
楽天を優勝させた「三位一体」の理念。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/11/29 10:31
「東北楽天ゴールデンイーグルス」の運営以外にも、「ヴィッセル神戸」(Jリーグ)、「THE 楽天 LPGA SKINS GAME」(女子ゴルフ)、「楽天オープン」(テニス)など、さまざまなスポーツ事業を手がける楽天グループ。
スタッフ全員の共感を呼ぶ理念とは何か?
パ・リーグ各球団の経営理念の中でも、今年日本一になった楽天は、一見すると表現が短く、当たり前のようなことを書いているが、ひと際ユニークな理念を掲げているとも言える。楽天の理念には強いチームになること、それが地域貢献と結びついていること、そして、球団の経営自体が健全であることが、明確に打ち出されている。
ただ、理念というのは、存在することが大事なのではない。理念は、スタッフに共感されるものでなければならない。つまり、スタッフの内発的な取り組みにつながる動機づけになっていることが重要である。
ではどのような理念がスタッフの共感を呼ぶのであろうか。
もちろん、1つにはその球団を率いる創設者、マネジメント層(時にスタッフの)の強い想いや実現したい世界観が表現されていることである。これはいうまでもなく非常に重要である。ただそれだけではスタッフ全員の強い「共感」を生むまでには到達しないことがある。
ファンとチームの好循環で健全な経営を。
ここで再び、楽天の理念を見てみる。
楽天の場合には、他球団も掲げる「地域密着型の実現」に付け加え「強いチームの創造」と「健全な経営」を理念に盛り込んでいる点が非常に面白い。
楽天が目指す「野球を通じて感動を創り、夢を与える集団」となるためには何が必要なのか。
楽天は、プロスポーツのマネジメント改革に注目が集まった時期に設立された球団だからなのか、スポーツビジネスの要諦をしっかり理解し、それを理念の中に盛り込んでいる。
つまり、
(1) 「地域密着型」を進め、地元のファンに支えられることで「健全な経営」が成り立つ。
(2) 「健全な経営」が基盤にあれば、選手の補強なども含め「強いチーム」を創ることができる。
(3) より「強いチーム」を創ることができれば、「地元のファン」にさらに喜んでもらえ、ロイヤリティの高いファンになってもらえる。
(4) ロイヤリティの高い「地元のファン」が増えれば、「経営はさらに健全」になる。
このサイクルを回すという考え方が、「野球を通じて感動を創り、夢を与える集団」になるためには欠かせないことを、理念に明確に示しているのである。