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<特集・JTマーヴェラス(1)> 尾崎侯監督 「多彩な攻撃が鍵」~新指揮官が語る再生への道~
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
posted2013/11/28 06:00
再生を目指す両チームは6月、指揮官を刷新した。新シーズン開幕を前に、
チーム再興のキーポイントを新監督に聞いた。
JTマーヴェラス、新時代の幕開けである。
昨年のロンドン五輪後、司令塔の竹下佳江が休養を宣言してJTを退団。そして今年5月、谷口雅美と大友愛が現役を引退した。長年チームの顔だったベテラン選手がユニフォームを脱ぎ、マーヴェラスは今季、新生チームとしてスタートした。
「ベテランが抜けた穴は確かに大きい。でも、彼女たちがいない分、若手一人一人が成長できる。今まではどうしてもベテランに頼ってしまっていたけれど、今季は『自分が何とかしなきゃ』という思いが出てきています」
そう穏やかに語る指揮官もニューフェイスだ。石原昭久前監督のもとコーチを務めていた尾崎侯が、今年6月、新監督に就任した。
「僕が監督なんて、不思議ですね」
「侯さんの言葉は、わだかまりなくスッと入ってくる」
イトーヨーカドー、武富士、JTで10年間コーチを務めてきた。選手と共にコートに入り、実際にプレーを見せながら指導するのがコーチとしての信条で、体が動かなくなったら現場を退くつもりでいた。
「口べたですから」と苦笑する。いずれは監督に、という野心は皆無だったという。監督を引き受けたのは、一大決心だった。
口べたと自覚するがゆえに、選手にかける言葉を慎重に選ぶ。そのひと言ひと言は、選手たちにしっかりと響いているようだ。1年ぶりにJTに復帰した橋本直子はこう語る。
「侯さんの言葉は、わだかまりなくスッと入ってくるんです。入りやすい言い方をしてくれている。すごく優しいけど、大事なことは、言いにくいことでもハッキリ言ってくれる。今はスタッフ、選手の風通しがすごくいい。侯さんが気を遣って、そういうふうにしてくれているからだと思います」
新指揮官は、優しい目で、しかし鋭くチームの課題を見つめた。6位に終わった昨季を踏まえ、今季はスパイク決定力とサーブ力の向上を重点ポイントに定めた。V・プレミアリーグの中でも平均身長が低いJTが決定力を上げるには、攻撃のスピードアップと選択肢を増やすことが必要。常に4人の選手が攻撃を仕掛けられるよう、バックアタックを強化した。