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「パスを出せ」と怒られても、打つ!
1トップ像をついに掴んだ岡崎慎司。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/11/13 10:30
ブラウンシュバイク戦での2ゴール以来、充実のプレーを続ける岡崎。フランクフルト戦は無得点で途中交代だったが「決め続けないとまた信頼が無くなってくると思う。そういう、FWとしての土俵に立てているのは良いのかなという感じはしますね」と緊張感あるコメントを残した。
岡崎慎司が変わろうとしている。
今シーズンからマインツへ移籍した日本代表のストライカーは、リーグ序盤戦は左MFとして起用されることがほとんどだった。8月11日に行なわれたシュツットガルトとの開幕戦こそ左MFとしてゴールを決めたが、それ以降はゴールからも見放されていた。
マインツでたまに1トップの位置で起用されても、本来の力を発揮できたとは言えなかったし、岡崎自身も迷いを抱えていた。9月14日に行なわれたシャルケとの試合では1トップで先発しながらも、効果的な動きは見られず、逆にマイボールのときに味方へのパスを相手に奪われて決勝ゴールを許してしまった。当時、岡崎はこう話していた。
「あの試合に関しては、1トップの受け方のイメージが全然つかめなくて。もらえなくて、もらったらどうしようみたいな感じでさまよっていたらああいうミスが出た感じ。最悪のプレーだった」
シャルケ戦の翌週のレバークーゼン戦では、マインツへ加入してから初めてスターティングメンバーから外れた。開幕前、コンフェデレーションズカップでの活躍もあって、岡崎は大きな期待を集めていた。ファン「23 OKAZAKI」とプリントされたユニフォームを買い求め、岡崎の活躍を心待ちにしていた。しかしこの時点では、期待外れの選手という烙印を押されても不思議ではない状態だった。
崖っぷちだったら、強さを発揮できる。
「俺って、期待されると弱いなという部分があるんですよね。さらに自分が上にいくためには期待に応えるという部分が必要なんだけど……。昨シーズンはシュツットガルトで出れない時期に耐えながら、やるべきことをずっとやってきて、崖っぷちだったコンフェデで点を獲ったりする感じだったじゃないですか? ああいう立場だったら、プレッシャーも全然ない。おれは、そういうところで強さを発揮できるんだってこと。じゃあ、どうやったらそういう強さに自分を持って行けるのか。問題は、試合になった時にいい意味で何も考えずに前だけ見てサッカーをするにはどうしたらいいのか、なんですよね」
しばらくの間は、我慢の時期が続いた。10月19日に行なわれたバイエルンとの試合では、マインツに加わってから初めて、1分もプレーしないままに試合を終えた。代表Aマッチデー直後の試合だったとはいえ、状況は芳しいとは言えなかった。