パッティングでハマった時の石川は無敵の強さになる。

　これまではどれだけ長く練習グリーンにいるかよりも、練習ラウンド中に実際のグリーンで打つ一打にこそ意味があり、実戦での一打こそが何よりの練習になるというスタンスだった。それをこれからは少しずつ変えていこうというのだ。

　実は勝美氏自身は前年も似たようなことを言ってはいたのだが、2010年は結局ショットに費やすことになってしまった。

「でも、これだけひどければやっぱり練習しなきゃダメだなと思うよね。ショットがあれだけよくなったからこそ、やっとそういう練習ができる」

　2010年シーズンもパッティングまで見事にハマった時の石川は目を見張る強さ、プレーを見せていた。

　58を出した5月の中日クラウンズでは、最終日の前に勝美氏からパッティングについて苦言を呈されていた。

「お父さんに『これだけパッティングをショートしていたら見ていて面白くない。お前のファンはどんどん減っていくぞ』と言われたので、強気に打って攻めようと思っていた。絶対にショートしないようにと」

　バーディーチャンスはほとんどが1m前後の短いものだったが、出だしの1番で3mのバーディーパットを決めるなどグリーン上でも積極性を貫けたことが世界最少スコアを生む一因となった。

トム・ワトソンからも賞賛された強気のパッティング。

　予選ラウンドを2位で突破する快進撃を見せた6月の全米オープンでは、予選ラウンドを一緒に回ったトム・ワトソンからドライバーよりもパッティングを賞賛された。

「怖いもの知らずで私が18歳の頃を思い出させてくれた。どうしたら彼のようにストロークできるのか一生懸命に見させてもらったよ。昔は私もあんな風に打てていたはずなんだからね」

　しかし、決勝ラウンドに入るとワトソンをうならせたパッティングが影を潜め、失速して順位を落としていったのだった。

　シーズン中は思い通りにいかないパッティングに対して、頭を悩ませ、試行錯誤している様子がよく伝わってきた。パターを変えたのも1度ではなかったし、グリップの握りをクロスハンドに変えてみたり、5月のダイヤモンドカップでは片山晋呉に「勇気を出して」教えを乞うたこともあった。宿舎では箱形の練習器具を使ってストロークを確認し、終盤戦に入るとまた新しい練習器具を導入したりもした。

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