女子MMAパウンド・フォー・パウンドに選出。

　藤井の願いを“普通のこと”として受け入れてくれたのは、スポーツ大国アメリカだった。同国で藤井は、女子MMAパウンド・フォー・パウンド（全階級を通じての1位）に選出される。22連勝という大記録を達成したアスリートを取材するため、アメリカから日本に取材に来た記者もいたという。

　今年7月、筆者がカンザスシティで開催された女子MMAイベント『インヴィクタFC』を取材した際も、セコンドとして訪れていた彼女の“レジェンド”ぶりは際立っていた。メインイベンター同様にサインや写真を求められ、公開計量の会場では「あのメグミ・フジイがセコンドで来ています」というアナウンスもあった。

あえて今年に引退試合を行った意味とは。

　彼女はその姿を、日本の女子格闘家たちに見てほしかったのではないか。今年、UFCの女子部門設立が大きな話題となったが、日本の女子MMAは歴史こそあるものの規模が小さい。当然、金銭や名誉といった見返りも少なく、“頑張ることの意味”が見出しにくいのだ。日本では結婚や出産が“タイムリミット”と捉えられがちな風潮も根強い。

　だから、藤井は常に“意味”を提示し続けた。30代後半になってアメリカで試合を行なったり、大晦日のビッグイベントに出場したのも「頑張れば、こんなふうになれるんだよ」という見本になるという目的があったからだ。

　今回の引退試合も同じだった。選手個人としては、昨年の段階で「やりきった」という感触があったのだが、華々しい舞台で多くの観客に見送られる姿を「一つの形として見せたかった」のだ。

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