スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ポストシーズンとマネーボール。
~ワールドシリーズは“貧乏対決”?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/10/05 08:01
21年ぶりのプレーオフ進出を果たしたパイレーツ。“貧乏球団”が巻き起こした旋風はどこまで続くか。
10月が来た。ポストシーズン・ゲームがはじまった。どこが勝ってもおかしくない乱戦の幕開けだ。
この傾向はいまにはじまったことではない。過去20年を振り返ってみても、シーズン最多勝を記録し、なおかつワールドシリーズを制したチームはたった3つしかない('98年のヤンキース、'07年のレッドソックス、'09年のヤンキース)。
今季の最多勝チームは、ア・リーグのレッドソックスとナ・リーグのカーディナルスが97勝で並んでいる。それにつづくのは、96勝のブレーヴスとアスレティックス。そして、今季はポストシーズンに進出した10チームがすべて90勝以上を挙げている。つまり、はっきりとした差はない。
勝率に差はないが、年俸総額には大きな開きがある。
上は2億2900万ドル、下は2400万ドルの戦い。
ご承知のとおり、大リーグは金満球団と貧乏球団の落差が大きい。最も裕福なヤンキースの年俸総額は2億2900万ドルで、最も貧しいアストロズの総額は2400万ドルだ。その間に、28球団がひしめく。いまさら紹介するまでもないと思うが、ヤンキースのあとには、(2)ドジャース(2億1600万ドル)、(3)フィリーズ(1億6000万ドル)、(4)レッドソックス(1億5900万ドル)、(5)タイガース(1億4900万ドル)といった常連がつづく。1億ドルを突破するのは全部で14球団。今季はそのなかから5球団がポストシーズンに進出した(ドジャース、レッドソックス、タイガース、カーディナルス=11位、レッズ=13位)
逆にいうと、残り16球団は1億ドル以下の金額でなんとかやりくりし、知恵を絞って戦力向上に努めている。そのなかから、こちらもやはり5球団が10月の短期決戦に駒を進めた。ブレーヴス(8900万ドル=18位)、インディアンス(8300万ドル=21位)、アスレティックス(6900万ドル=26位)、パイレーツ(6600万ドル=27位)、レイズ(5700万ドル=28位)が、その善戦健闘組だ。
こう並べてみると、ニューヨークの2球団とシカゴの2球団の姿が見当たらない。これでもし、ドジャース(ロサンジェルス)がペナントレースで敗退していたら、複数の球団を擁する大都市はそろって顔色を失うところだった。