沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
あのオルフェが“100%の力”で完敗。
トレヴが見せつけた凱旋門の高き壁。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byTomoki Momozono
posted2013/10/07 11:35
道中馬群に完全に包まれてしまうという不利も響いたのか、それとも斤量差のせいだったのか、オルフェーヴルは直線でトレヴとの差を縮めることはできなかった。
やはりまだ、世界との間には「壁」があるのだろうか。「この2頭ならワンツーフィニッシュも」と期待されていたオルフェーヴルとキズナは、それぞれ2、4着に敗れた。
10月6日(日本時間同日深夜)、世界最高峰のGI、第92回凱旋門賞がロンシャン競馬場の芝2400mで行われた。
前日、ブックメーカーで2番人気に支持されていたノヴェリスト(ドイツ)が熱発のため出走を取り消し、5カ国の17頭による争いとなった。
金曜日の枠順抽選会の時点で、武豊が「切れ味が怖い」と警戒していたザフューグ(アイルランド)が回避しており、日本馬に流れが向いてきたのかと思われたのだが――。
勝ったのは、これで戦績を5戦5勝とした3歳牝馬のトレヴ(フランス)だった。
理想的なポジションが取れた日本勢だったが……。
ゲートがあくと、クリストフ・スミヨンが操るオルフェは後方の内に控え、武のキズナはそれを見るように後方の外で折り合いをつけた。
武は言う。
「いつものようにゆっくりとしたスタートになりましたが、他馬の動きを見られるいいポジションがとれました。近くにオルフェーヴルがいて、トレヴの真後ろだった。ベストポジションだったと思います」
馬群に押し込められるような格好になったオルフェのスミヨンは、
「少し締められた感じはあったが、それほど影響はなかった」
と振り返る。
馬群は密集したまま淡々と流れ、4コーナー手前でトレヴが動くと、キズナもそれについていった。
「トレヴが少し早めに動いてくれたので、それをマークしながら最高の形で直線に入ることができました」と武。
しかし、そこからトレヴは桁違いの瞬発力を発揮し、独走態勢に入った。
オルフェやキズナも伸びてはいたのだが、追いつけそうな気配のまったくないワンサイドゲームだった。トレヴが2分32秒04でゴールを駆け抜け、92代目の凱旋門賞馬となった。