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オルフェとキズナ、史上最強の日本勢。
凱旋門賞、陣営が見せる自信の根拠。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byPanoramiC/AFLO
posted2013/10/04 10:30
オルフェーヴルは前哨戦のフォア賞で他馬を一瞬で突き放し、騎乗のスミヨンが後ろを振り返るほどの余裕だった。
世界最強馬を決める戦いの日が、近づいてきた。
フランスのロンシャン競馬場が舞台となる第92回凱旋門賞(10月6日、GI、芝2400m)。1920年に創設されて以来、ヨーロッパ調教馬しか勝ったことがない強固な牙城を、2頭の日本馬が崩そうとしている。
オルフェーヴルとキズナである。
オルフェーヴル(牡5歳、父ステイゴールド、栗東・池江泰寿厩舎)は、昨年の凱旋門賞で前をごぼう抜きにし、「勝った!」と思われたところで内にもたれて失速。2着に惜敗した。束の間の歓喜に沸いた日本の競馬ファンは一転、奈落の底に突き落とされた。
あれから1年。管理する池江は、気性の難しさから来るオルフェの欠点の克服に重点を置いて調教してきた。
「ひとつは折り合いをつけてリズムよく走ること。もうひとつは、抜け出してもまっすぐ走り、後ろの馬を待ったりせず、前へと推進していくこと。この2つをテーマに1年間やってきました」
前哨戦のフォア賞、持ったままで3馬身突き放す。
その効果が現れたのが、凱旋門賞と同じコースで行われた前哨戦のフォワ賞(9月15日、GII)だった。
超スローな流れのなか、馬群の内で折り合いをつけたオルフェは、直線、持ったままで抜け出し、勝った。昨年の凱旋門賞のように内によれることもなく、差のつきにくい緩い流れだったにもかかわらず、2着を3馬身突き放す化け物ぶりを見せつけた。
3月末の大阪杯以来の休み明けで、しかも途中、肺出血を発症するアクシデントがあったなどとは思えない走りだった。クラシック三冠と有馬記念を勝った一昨年や、凱旋門賞で世界中を驚かせる末脚を見せた昨年より、さらに強くなっている。
「それだけ伸びしろがあった、ということです。ここに来て、ようやく完成の域に近づいてきましたね」
と池江は笑みを浮かべる。
その圧巻のパフォーマンスにより、オルフェはイギリスのウィリアムヒルなどのブックメーカーで、凱旋門賞の1番人気に支持されるようになった。