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経営危機を越えブンデス史上最強に!
ドルトムントの“黄金の成功術”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/12/05 08:01
2008年の就任後、チームを着実にステップアップさせてきたクロップ監督
今ごろバイエルンのヘーネス会長は、顔を真っ赤にせんばかりに、憤りを覚えているのではないだろうか。ヘーネスがGMを務めていたときに、“彼”の獲得に動いたことがあるからだ。
11月25日、2012年6月30日で切れることになっていたドルトムントとクロップ監督の契約延長が発表された。新たな契約期間は2014年6月末まで。2年間の延長オプションもついている。
2008年、ヒッツフェルトが去ったあとのこと。クロップはバイエルンの監督候補に挙がっていた。最終的にはクリンスマンがバイエルンの監督の座についたのだが、シーズン終了を待たずに解任されたのは周知の通りである。
14試合を終えてドルトムントは37もの勝ち点を積み上げ、首位を快走中だ。この勝ち点はブンデスリーガ史上トップタイの成績で、第15節のニュルンベルク戦で勝てば、'05-'06シーズンにマガトの下でバイエルンが作った記録を抜いて、歴代トップに躍り出る。
2008年にクロップが就任してからの平均勝ち点は1.87におよび、この数字は、ドルトムントにチャンピオンズリーグのタイトルをもたらすなど一時代を築いた名将ヒッツフェルトの成績をも上回る。もちろん、クラブ史上最高の成績である。
クロップ監督の下、自らの市場価値を上げていく選手たち。
ヴァツケCEOはクロップ監督の功績を説く。
「彼の下で、まず守備が整備された。そして、運動量をベースにチームは強くなったんだ」
過去から現在における功績はもちろんのこと、クロップが評価されたのは未来への道筋を作ったからでもある。
「2008年7月にクロップがやってきたことで、魅力的な攻撃サッカーが実現され、今季はドルトムントがブンデスリーガを制圧。新たな時代を我々は目撃することになった」とキッカー誌は伝えた。
「ドルトムントは“黒と金色”の未来を描いている」
チームカラーの黒と黄色をもじって、金色に輝く未来を想起させるのはビルト紙だ。
クロップの下で成長した選手は数知れない。DFのスボティッチは2008年に350万ユーロの移籍金でマインツからやってきたが、現在は1500万ユーロの価値があると見られている。FWのバリオスは2009年に420万ユーロでやってきたが、現在は1400万ユーロ。500万ユーロでやってきたDF、フンメルスは1000万ユーロの価値がある。(上記のデータは、いずれもtransfermarkt調べ)
現在のドルトムントのトップチームに登録する選手の獲得にかかった金額は3670万ユーロだが、ビルト紙は市場価値が約3.5倍の1億2835万ユーロまで膨れ上がっていると報じた。あるいは、第14節のボルシアMG戦に先発したメンバー、つまりレギュラークラスの選手に限ればその市場価値は1630万ユーロから、約5.7倍の9300万ユーロにまで急上昇したとスポーツビルト誌は見積もっている。