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<初安打から振り返る金字塔> イチロー 「1-4000、ひたむきな旅路の果てに」
text by
小西慶三Keizo Konishi
photograph byYukihito Taguchi
posted2013/09/11 06:00
プロ生活22年目、39歳にして遂に到達した4000の高み。
「積み重ねの結果」といつものように言葉はクールでも、
今回ばかりは喜びの気持ちを隠さなかった。初安打から
4000本までを追いかけてきた記者が紡ぐ、戦いの歴史。
「積み重ねの結果」といつものように言葉はクールでも、
今回ばかりは喜びの気持ちを隠さなかった。初安打から
4000本までを追いかけてきた記者が紡ぐ、戦いの歴史。
乾いた音とともに鋭い当たりが飛んだ。2013年8月21日、ブルージェイズ戦1回1死。カウント1-1から、R・A・ディッキーが投じた外寄りナックルボールを漆黒のアオダモバットが捉える。三塁ブレット・ロウリーが横っ跳びしたが間に合わない。4000本目は球足の速いゴロでのレフト前ヒットだった。
それまで3999本。さまざまな球種を、多彩なスイングで全方向へ打ち分けてきたイチローは言った。
「レフトスタンドへのホームラン以外はどんなヒットも僕らしくなると思っていた」
打席前から立ったままだった観客のボルテージは一気に上昇する。突然重厚なBGMが流れ、中堅後方の大型スクリーンには「4000」の大文字が浮かぶ。一塁ベンチからチームメートが祝福に駆けつけ、試合はプレーボール早々から5分近くも中断した。
予想外の出来事にイチローの感情が揺さぶられた。
「ちょっとやめてほしいと思った。僕のためにゲームを止めて、僕だけのために時間をつくってくれるという行為なんかとても想像できるわけない。それもヤンキースタジアムで……。ただただ感動しました」
この日、ESPN、MLB・TVなど専門局が達成のテロップを流し、翌日のニューヨーク地元メディアは大きく紙面を割いてプロ4000本を称えた。日米通算の参考記録に異例の反応があったのは、その主役がイチローだったからに他ならない。