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セナやシューマッハーを越えるのか!?
F1史上最年少王者の“神童”ベッテル。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2010/11/16 12:00
“皇帝”が消えたレースで新しいドイツ人王者が誕生。
そして冒頭のシーン。
F1史上初となった四つ巴による最終決戦。
西日に照らされた決勝のスターティンググリッド上のマシンに乗り込んだベッテルは、スタートまで10分を切って、張り詰めた緊張感が漂うグリッドに浜島を呼んで、あることを確認していた。
「(スタート時に装着している)オプションタイヤは何を注意すればいい?」
浜島は答えた。
「序盤にリアタイヤを使いすぎるな。できるだけいたわって走れ」
「わかった。じゃ、プライム(硬いほうの)タイヤはどう?」と聞き返すベッテルに、浜島は「プライムは何も心配はいらない」と告げて、最後のレーススタートを待った。
それから1時間39分後、ベッテルは速さと冷静さを兼ね備えた王者に相応しい完璧なレース運びでポール・トゥ・フィニッシュ。皇帝シューマッハーが1周目に姿を消したレースで、後継者ともいえるベッテルがシューマッハー以来のドイツ人チャンピオンに輝いたのである。