MLB東奔西走BACK NUMBER
イチローも10月でついに40歳に。
全米屈指のベテラン力の源泉に迫る。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/08/18 08:01
打撃不振のヤンキースで、ベテランながらチーム上位の打率を誇るイチロー選手。チームにとって欠かせない存在となっている。
ピークは過ぎても、圧倒的な安定感は健在。
特に今シーズンの月間打率を見ていくと、4月.268、5月.247、6月.292、7月.305、8月.333(8月9日時点)と、月を重ねるごとに調子を上げてきているのだ。
ベテランにとって疲労が積み重なるシーズン後半は、決して楽なものではないはずだ。それなのにイチローは逆に成績を上げていっているのだから、もはや彼に一般常識を当てはめること自体、ナンセンスとしか思えなくなってくる。
もちろんイチローだって人間だ。これまでの成績の推移をみれば、彼のバッティングがピークを過ぎているのは確かである。だがその一方で、決して極端な落ち込み方をしていないのも事実である。イチロー同様に好打者として知られるヘルトン、イバネスと比較してみよう。
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ヘルトンの2010年以降の成績の落ち込みは顕著だし、イバネスの長打力こそあまり差はないが、2011年以降の打率の低下を見れば打撃の衰えは隠せない。それらと比較すればイチローの成績は今なおかなり安定していると言っていい。単純にイチローの成績だけをみて“衰えた”と捉えるのは早計ではないだろうか。こうして同世代の選手たちと比較すれば、彼が未だに“突出した”選手であり続けている。
“メジャー球界の鉄人”となったイチロー。
39歳、まもなく40歳にして今なお、メジャー球界の特異な存在であり続けられるのは、イチローの卓越した体調管理があるからだ。
今シーズンも現在のペースでいけば、150試合出場はほぼ間違いない。
過去イチローが150試合未満の出場に留まったのは、開幕直前に胃潰瘍で故障者リスト入りした2009年の一度きりだ。しかも、故障者リスト入りしたこともこの一度だけ。いわゆる外傷による負傷で戦線離脱したことは皆無である。これ自体、メジャーでは希有な存在なのである。
メジャー記録の2632試合連続出場を果たしたカル・リプケンJr氏でも、38歳以降は3度の故障者リスト入りを経験し、1999年86試合、2000年83試合、2001年128試合の出場に留まり、この年、41歳で引退している。
まさに現在の“メジャー球界の鉄人”と化したイチロー。かつて50歳まで現役を続けたい、という夢を語ったのはあまりに有名だが、それが夢でなくなる日がくるかもしれない。
40歳で迎える来シーズン。1992年にデーブ・ウィンフィールド氏が40歳で記録した156試合出場というメジャー記録の更新は十分に狙える位置にいる。
果たしてイチローは何歳まで現在のレベルでプレーを続けることができるのか。彼に対する興味はいつまでも尽きることは無さそうだ。