MLB東奔西走BACK NUMBER
レンジャーズのクリフ・リーの大誤算。
“Mr.オクトーバー”を襲名できず!?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byRon Vesely/MLB Photos via Getty Images
posted2010/10/31 08:00
リーは、サイ・ヤング賞を受賞した2008年(当時インディアンス)には、ともにリーグ1位となる22勝3敗、防御率2.54を記録した
誰がこんな幕開けを想像しただろうか?
ワールドシリーズ第1戦、レンジャーズ対ジャイアンツ。
2008年サイ・ヤング賞受賞のクリフ・リーvs.2008&2009年の同賞受賞のティム・リンスカム。両エースの先発に、誰もが熾烈な投手戦を思い浮かべていたはずだ。
だが実際は、リーは5回途中8安打7失点、リンスカムも6回途中8安打4失点で降板。11対7という乱打戦の上、地元ジャイアンツが勝利した。
同時に、リーがここまで続けていたプレーオフの無敗記録までが潰えてしまったのだ。
大舞台に滅法強いリーがプレーオフで喫した初黒星。
今季のプレーオフを見ていて、ワールドシリーズ前までのレンジャーズのクリフ・リーにはまったくつけ入る隙がなかったことを思い出した。
リーグ優勝決定シリーズまでで3試合に登板し、3勝0敗、防御率0.75。
さらに投球回数は24イニングと1試合平均8回を投げきり、奪三振34に対し与死球はわずか1。今シーズンのメジャー最多勝96勝のレイズ、95勝のヤンキースを完全に手玉にとる投球だった。
特に対レイズのシーズン成績は0勝3敗、防御率4.56と苦手にしていたのだが、大一番のプレーオフでは完全に封じ込めた。
レンジャーズが念願だった球団史上初のワールドシリーズ出場を決めたのも、投手陣の大黒柱になったリーの存在があったればこそだ。
プレーオフの活躍は今シーズンだけではない。
昨年はフィリーズの一員としてプレーオフ初出場を果たし、チームはワールドシリーズで惜しくもヤンキースに敗れたとはいえ、5試合に登板しワールドシリーズ2勝を含む4勝0敗、防御率1.56と圧倒的な成績を残している。
つまりプレーオフではここまで無敗。大舞台で主役をはれる男なのだ。