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松坂大輔とマーク・プライアー。
~復活に懸ける32歳の天才投手~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/07/27 08:01
18勝を挙げた2003年、カブスでの雄姿。マーク・プライアーがふたたびメジャーのマウンドに還ってくる日は来るのか。
松坂大輔が踏ん張っている。32歳のいまも、インディアンス傘下のAAAコロンバスで投げつづけている。
今季はマイナーリーグで14試合に登板した。いずれも先発。7月下旬までに70回3分の1を投げて、2勝6敗、防御率=3.97の成績はまだまだ本調子といえない。
ただ、内容は少しずつよくなっているようだ。9回あたりの三振奪取数も8.96に達している。あと2試合ほど好投がつづくようなら、年内のメジャー復帰もかなり可能性がある。
そんな松坂の奮戦を見ていると、同じ1980年生まれの、ある投手のことを思い出してしまう。
彼も天才だった。松坂と同様、いや、一時は松坂以上に脚光を浴びた存在、といっても過言ではないだろう。
マーク・プライアー。
10年ほど大リーグを見てきた人なら、よもやこの名前を忘れてはいないはずだ。
最初にお断りしておくが、プライアーはまだ野球をやめていない。相次ぐ故障で苦しんではいるが、彼はまだあきらめていない。
史上最高額の契約金でカブスに入団。
プライアーは、2001年アマチュア・ドラフトの全体2位でカブスに入団した(全体1位は、ツインズに入ったジョー・マウアーだ)。カブスはUSC出身のプライアーに、1050万ドルの契約金を用意する。当時は史上最高額。この数字は'09年まで破られなかった。破ったのは、ナショナルズと1500万ドルで契約したスティーヴン・ストラスバーグだ。
入団早々、プライアーの右腕は天才の片鱗を覗かせた。マイナーリーグで、9回平均13.9個という驚異的な三振奪取数を記録したのだ。翌'02年には、早くもメジャー昇格。ただし、この年のカブスは、1年間に監督が3回も交替するというありさまで、プライアーも力を発揮できない。19試合に先発し、116回3分の2を投げて6勝6敗の成績だった。
だが'03年、監督がダスティ・ベイカーに代わると、プライアーの才能は爆発する。
30試合に先発した彼は、211回3分の1を投げて18勝6敗(ナ・リーグ2位タイ)、防御率=2.43(ナ・リーグ3位)、奪三振数=245(ナ・リーグ2位)の好成績を残す。