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イギリスGPでもタイヤトラブル続出。
危機を水際で止めた各チームの英断。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byPress Association/AFLO
posted2013/07/25 10:30
レース後、使用されたピレリのタイヤを返却するフォース・インディアのスタッフ。
イギリスGPで多発したタイヤトラブル。その後、ピレリは2週連続での開催となったドイツGPに、不眠不休で構造設計を変更したタイヤを投入。タイヤのトラブルを再発させることはなかった。
さらにハンガリーGP以降は、安全性の確認ができている2012年の構造に戻し、それに今年のコンパウンドを組み合わせた新タイヤを持ち込む予定でいる。これで今シーズン続いていたタイヤのトラブルは、収まりを見せるだろう。
ピレリの迅速な対応。そして、それを可能にしたFIAのサポート。しかし、両者よりも、素早い対応でこの危機的状況を救った者たちがいる。それは、イギリスGPが行なわれたあの日、シルバーストンでレースを戦っていた各チームである。
イギリスGPでは、ルイス・ハミルトンをはじめ4台のマシンが左リアタイヤをバーストさせた。しかし、タイヤにトラブルを抱えていたのは、この4人だけではなかった。
ハミルトンがバーストに見舞われた後、トップを走っていたセバスチャン・ベッテルが1回目のピットインをした後、使用されたタイヤをチェックすると、タイヤのショルダー部分に亀裂が起きていた。同様にフェルナンド・アロンソのタイヤもバースト寸前だったという。このほかにもニコ・ロズベルグ、ニコ・ヒュルケンベルグ、マックス・チルトンのタイヤにも異変が発生していた。
14台が棄権した2005年アメリカGPの悪夢。
バーストまたはタイヤの構造部分に亀裂が入るトラブルという言葉を聞いて、思い出されるのが8年前のアメリカGPだ。
2005年にアメリカGPで起きたタイヤトラブルは、金曜日にトヨタのラルフ・シューマッハが最終コーナーでタイヤをバーストさせたことで幕を開けた。その後も、トヨタのリカルド・ゾンタのタイヤにトラブルが発生。フリー走行後、ミシュラン・ユーザーのタイヤをチェックすると、トヨタ以外のドライバーにもトラブルの兆候が見られていた。
F1アメリカGPの最終コーナーはインディアナポリス・モーター・スピードウェイのオーバル部分となっており、コーナーにバンク(傾斜)がついている。そのためマシンを地面に押し付ける力が通常のコーナーよりも大きくなる。その巨大な縦Gフォースにミシュラン・タイヤの強度が耐え切れなかったり、タイヤの表面が波打って変形してしまうスタンディングウェーブ現象が起きたことによって、構造が破壊されていたのである。