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ドイツで不動の地位を築いた長谷部。
欧州で輝くための次なる条件とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/10/14 10:30
アルゼンチン戦では岡崎慎司の得点に絡む活躍を見せた長谷部誠。ザックジャパンでの成果をクラブでも活用できるか?
「得点の匂いが感じられない」と厳しい評価も……
手ごたえはある。だが、監督からの高い評価とは対照的に、ここまではメディアから厳しい評価を下されている。
例えば『キッカー』誌の採点を見てみると、ハノーファー戦では3点がつけられたが、ハンブルガーSV(HSV)戦とフライブルク戦では4点、ボルシア・メンヘングラッドバッハ戦では5点がつけられた。最高点が1点、最低点が6点となるドイツ式の採点の中で、長谷部につけられた点数は決して良いとは言えない。もっとも5点をつけられたボルシアMG戦ではエースのジェコにも5点がつけられており、チームとして攻撃が機能していない状況を糾弾されている。補強に多くのお金をかけているチームであるため、周囲の評価もまた厳しくなる。
『キッカー』誌は現在の戦い方について言及する中で、「長谷部とカーレンベルクからは得点の匂いが感じられない」と報じた。
ボルシアMG戦では試合中にカウンターから2トップの一人グラフィッチが右サイドをドリブルで進んでいたシーンがあった。ジェコと長谷部がペナルティエリアへ向かって走っていたのだが、長谷部はペナルティエリアの手前で止まってしまった。そのシーンについては、長谷部自身も反省していた。
「自分も行こうとしたんですけど、ベンチから『待て』と言われて……。どう考えても他に誰もいなかったし、自分が(ゴール前に)行ってもリスクを冒していないし。あそこで止まっちゃう自分も悪い」
守備か攻撃か? ボランチが直面する状況判断の難しさ。
ヴォルフスブルクが開幕から3連敗を喫したのは、守備が崩壊したからだ。実際、開幕からの3試合で8失点を喫している。長谷部が復帰してからの4試合で3勝1分という成績を残せたのは、チームのフォーメーションを4-3-3から4-3-1-2に変更するなど、守備の意識を大きく変えたためだ。失点も4試合で3点に抑えている。
一方で、攻撃から迫力が失われることになった。得点も相手のミス絡みやカウンターからのものが多い。3対1でHSVを下したアウェイゲームでも内容はほめられたものではなかった。
「監督には前にいくなと言われてるけど、それでも前にいかないと良い攻撃にはならないから。その辺は監督の言うことだけじゃなくて、自分で考えてやっていきたいなと思いますね」
監督の指示通りに攻撃でも攻め上がりを抑えて、相手のスペースを消そうとする。だからこそ、監督からは重宝される。ただ、長谷部をはじめとしてボランチの選手が攻撃に加わっていかなければ、攻撃の厚みは生まれない。監督の指示を守り続けるのか、それを破ってでも攻撃に加わるのか。ジレンマに陥っている。