Jリーグ万歳!BACK NUMBER
コンフェデで感じた世界の采配。
駆け引きができる日本人監督を!
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAP/AFLO
posted2013/07/06 08:01
全ての交代カードを使いきった後も、細かな指示をだし、選手たちを鼓舞しつづけたプランデッリ。監督の力が試合の展開に大きな影響を与えるということを改めて知らしめた。
コンフェデレーションズカップを観て改めて実感したのは、監督という仕事の難しさと面白さである。
中でも興味深かったのは、イタリアvs.スペインの準決勝だ。近年におけるイタリアの変化に注目している筆者は、3バックを採用したアズーリの布陣を見て「またやった」と声を漏らし、たったそれだけで「勝てるかもしれない」と興奮した。“3バックのイタリアvs.スペイン”は、1年前のユーロ初戦の再現である。
大会のベストマッチの1つに挙げられたあの試合で、イタリアは世界王者のスペインを相手に互角の戦いを演じた。結果は1-1のドロー。大会前に発覚した国内リーグにおける八百長問題によって冷えきっていたチームは、たった1ポイントの勝ち点によって一気に体温を取り戻した。
それまで一度も試したことがなかった3バックは、指揮官プランデッリにとって大きな賭けだった。しかしスペインにとっても予想し得ない奇策だったからこそ、この戦術にはとびきりの効果があった。もちろん、単純な奇襲に屈するスペインではないが、しかしイタリアの奇襲には確固たる勝算があった。ラインを高く保って全体を押し上げ、ピッチの中央に集まるボールを複数で囲み、ボールを奪ったら素早く外に広げる。そうして中央に強いスペインの守備をサイドに分散し、相手を囲みやすく、相手に囲まれにくい展開に持ち込む。そうしたイメージは対スペインの戦術として見事にハマった。
我々がスペインを最も苦しめたチームの一つなのだ。
だからこそ、スペインと再び顔を合わせたユーロ決勝で、4バックを選択せざるを得ないチーム状況にあったことが残念でならなかった。さすがの策士プランデッリもタイトルが懸かった舞台で当たって砕ける覚悟はできなかったのだろう。結果、4バックのイタリアはスペインに完膚なきまでに叩きのめされた。
イタリアにとって、コンフェデレーションズカップは“あれから1年”の成長を見せつける格好の舞台だった。試合前日の記者会見で、プランデッリは言った。
「ユーロのリベンジではない。ただ選手たちには、我々がスペインを最も苦しめたチームの一つなのだということを思い出させたよ。スペインには最大限の敬意を払っているが、我々は勇敢に戦わなければいけない」