ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
スターが集う全米OPは恰好の“学校”。
21歳の松山英樹、大胆不敵の向学心。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byZUMA Press/AFLO
posted2013/06/20 10:30
最終日に大会ベストスコアを叩きだした松山。帰国後「世界のトップがまわっても、67というスコアしか出てないなかで、自分もそのスコアで回れたことはすごく自信になった」と語った。
敵の力を知り、実力差を計ることが目標への最短距離。
結局この日はワトソンが、コンディション不良のため練習を急きょキャンセル。キャディが一人でコースをチェックする事態となり、王者を間近で観察することはできなかった。「逃げられちゃいました」と自虐的にうつむく松山。しかしこんな風に勇気を振り絞って、自らトッププレーヤーに接近する日本人選手が今、どれほどいることか。
夢のメジャーとはいえ、わざわざ日本から長い時間と労力をかけてスポット参戦するのだ。ましてや、将来の米ツアー優勝、メジャータイトル獲得を夢とするならば、いずれは彼らを倒さなくてはならない。目標に最短距離で辿り着くためには、まずは敵の戦力を知り、差を知ることが必要だろう。
同組のラングレーが舌を巻いた松山のタフなメンタル。
最終日、松山と同組でプレーしたスコット・ラングレーは24歳。今季のPGAツアーのルーキーで、既に優勝争いも経験している選手だ。そのスコットも「すごく印象的な選手だ。ショットもパットもどちらもレベルが高いと思う」と松山のオールラウンダーぶりを評価。 しかしそれ以上に、彼が絶賛したのは難コースや、ミスにも動じない強靭なハートだった。
「僕より若いのにすごくタフネスを感じた。全米オープンの最終日に、このプレーだからね。もちろんすぐにPGAでやれるはずだ。もう一回言うけど、全米オープンで67を出すんだから。今は韓国の選手も、たくさんこっちに来ているだろう。これから彼がやるべきことは、同じようにとにかく色んな場所で経験を積むことだと思う」
今大会を終えた直後、松山は「英語が、全然わかりませんでした。頑張らないと……」と1週間で一番の苦笑いを見せながら、頭をかいた。しかしそんな風に、恥をかいてでも外国人選手から何かを吸収しようとする気概も、スーパールーキーの評価されるべき才能だ。