オリンピックへの道BACK NUMBER
松平健太、世界卓球で初のベスト8。
“20年に1人の逸材”の逆襲が始まる!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2013/06/03 10:31
準々決勝で世界ランキング1位のキョ・キンに肉薄。今大会は兄・賢二、妹・志穂と兄妹3人揃って代表入りしたことも話題になった。
スランプから脱する道筋を示した松平。
躍進の背景には、やはり、失意に沈んだことがある。'11年の世界選手権での不本意な結果をはじめ、以前は精神面での甘さなどを指摘されることもあった。だが昨年から、練習への意識も高くなったという。さらに体格的にもたくましくなったが、地道に筋力の向上に努めてきたからであり、そこにも取り組みの変化がうかがえる。
松平にかぎらず、世界一、世界最高記録など鮮やかな活躍を若いうちに見せたあと、スランプになるケースは珍しくはない。だが、そこから脱する道筋はあるということを、松平は示してくれた。
パリから帰国した松平は、こう語っている。
「('09年世界選手権の)横浜の後、駄目になってしまったので、同じ失敗を繰り返さないようにしたいと思います」
挫折から立ち直った今、自身を受け止める内面の成長を感じさせる言葉だ。同じ轍を踏むことはないだろう。むろん、今回の成績にとどまる器でもない。さらなる飛躍が楽しみだ。
若手の台頭で世界一の強国、中国の背中も視界に。
松平の活躍に加え、男子では岸川・水谷がダブルスで銅メダルを獲得し、18歳の丹羽、岸川がシングルスでともに初のベスト16入りを果たした。
世界選手権にかぎらず、今年1月のオーストリアオープンでは、高木和卓がロンドン五輪金メダルの張継科(中国)を破っている。
'80年代以降、日本卓球協会が年代別の全国大会を設け、その後、小学生のナショナルチームを結成するなど普及と育成に努めてきたことで、卓球界は若い選手が台頭してきた。世界の上位を、いや、トップを目指す選手たちも続々と現れ、世界一の強国、中国の背中を視界に捉えるところまで来ている。
日本男子は、昨年のロンドン五輪では目標としていたメダルには届かなかった。しかし、長年の強化の結果として、あらためて選手層の厚さと、ポテンシャルの高さを示したのが、今回の世界選手権だった。
3年後のリオデジャネイロ五輪でのメダル獲得、そして打倒中国を目指し、進んでいくことになる。