濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
K-1トップの佐藤嘉洋が後楽園に!
『Krush』で見せた貫禄と精神性。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2010/09/02 10:30
空手を軸にキックの舞台で勝ち上がってきた名城裕司(写真左)に対して、佐藤嘉洋は怯むことなく、ローとヒザを出し続けた
佐藤は“メジャーリーガー”の貫禄で名城を抑え込んだ。
サウスポースタイルから繰り出す名城の右ジャブは、佐藤の顔面を何度となく捕えた。しかし佐藤は絶対に下がらない。無表情のまま前進し、左右のローキックとヒザ蹴りを放ち続けた。それは“愚直”ではなく“確信”だった。相手がなにをやってこようと、自分のローとヒザは絶対に効く。この攻撃を続けていれば、間違いなく勝てる――。
試合が進むにつれ、名城の手数が減っていく。後半になると足のダメージは隠しようもなかった。試合終了のゴングが鳴った時には、優劣は完全に明らかになっていた。判定は3-0。KOではなくダウンシーンもなかったが、佐藤の勝利は異論の唱えようがないものだった。
佐藤は、“メジャーリーガー”の貫禄と精神性で名城の勢いを抑え込んだ。己のファイトスタイルに確信を抱き、しかし決して油断することはなかった。変化のない表情の裏に張り付いていたのは、世界トップレベルの強豪たちを相手に幾度も修羅場を経験してきた凄みにほかならない。