凱旋門賞で武と共に父ディープの無念を晴らすべく……。

　ダービー初制覇の相棒となったスペシャルウィークにも、4度目の優勝となったディープインパクトにも、彼はダービーを勝つための「英才教育」を施してきた。東京芝2400mを見据え、過去のダービー優勝馬が刻んだものに近いラップで走らせる、というものだ。キズナもしかり。かつて武がダービーを勝たせた4頭と同じく、東京の長い直線でこそ大きな武器となる瞬発力に磨きをかけ、ついにディープに匹敵するほどの末脚を繰り出せるようになった。

　キズナはディープが送り出した3世代目の産駒である。まだ3世代だから不思議ではないかもしれないが、武がダービーでディープ産駒に騎乗するのはこれが初めてとなる。

　ダービーを2勝した騎手は武を含めて12人いるが、3勝以上したのは武ひとりだ。

　キズナは、ロゴタイプ、エピファネイア、コディーノといった皐月賞上位組に比べ、強い相手と厳しい競馬をしていないことがマイナス要因とされている。しかし、毎日杯、京都新聞杯と、たとえ相手のレベルが落ちようが、「負けられない戦い」に臨み、勝ち切ったことは高く評価されるべきだ。

　これが24回目のダービー参戦となる武が、キズナを世代の頂点の座に押し上げることができるか。

　ダービーを勝てば、という条件付きだが、キズナは、10月6日にフランスのロンシャン競馬場で行われる世界最高峰の舞台、凱旋門賞（GI・芝2400m）に参戦する予定だ。7年前に3位入線後失格となった父ディープインパクトの無念を、武とともに晴らすことができるか、夢は大きくひろがる。