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2年目の大器とライバル物語。
~ハーパー&トラウト、伝説の相似~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2013/05/04 08:01

2年目の大器とライバル物語。~ハーパー&トラウト、伝説の相似~<Number Web> photograph by Getty Images

ともに昨年ブレイクしたハーパー(左)とトラウト。今季ここまでの成績は明暗が分かれているが……。

 マイク・トラウトがウィリー・メイズで、ブライス・ハーパーがミッキー・マントルなのか。それとも逆か。トラウトがマントルになって、ハーパーがメイズになるのだろうか。

 歴史は繰り返さない。歴史は教訓になっても、法則にはならない。澁澤龍彦に教わって以来、私はずっとそう考えてきたが、2つのライバル物語は、あまりにも似た要素が強い。先のことはまだわからないものの、第1章だけなら驚くほどよく似ている。

 メイズ(ニューヨーク・ジャイアンツ)とマントル(ニューヨーク・ヤンキース)は、どちらも1931年に生まれ、両者とも身長が178センチだった(体重はマントルが90キロで、メイズが82キロ)。ふたりは1951年にそろってメジャー・デビューし、たちまち注目を集めた。

 メイズの1年目は2割7分4厘(打率)/3割5分6厘(出塁率)/4割7分2厘(長打率)で本塁打が20本だった。

 一方のマントルは、.267/.349/.443の成績で、本塁打は13本だった。

 2年目の'52年、メイズは34試合に出場しただけで朝鮮戦争に応召した。兵役は'53年までつづき、'54年、野球の世界に戻ってくると、.345/.411/.667のめざましい成績を残した。本塁打は41本。

 マントルも大器らしい成長を見せた。2年目が.311/.394/.530、23本塁打。3年目が.295/.398/.497、21本塁打。そして6年目の'56年には、スイッチヒッターとして初の三冠王に輝いている。

トラウトとハーパー、その双子のごとき共通点。

 では、60年後に再現されようとしているトラウトとハーパーのライバル物語はどうなのだろうか。

 メディアがくりかえし書き立ててきたことだが、ふたりはいろいろな面で似ている。まず、歳が近い。トラウトが'91年8月生まれで、ハーパーが'92年10月生まれ。身長・体重は、188センチ、104キロと双子のように同じだ。どちらもファイヴ・トゥール・プレイヤー(打率、長打力、走塁、強肩、守備力と5拍子がそろっている)で、本格的デビューがともに2012年。

 この年、トラウトは.326/.399/.564、30本塁打、49盗塁(リーグ最多)という圧倒的な成績でア・リーグ新人王を獲得した。ミゲル・カブレラが三冠王に輝かなければ、MVPも手中に収めていたのではないか。一方のハーパーも、.270/.340/.477、22本塁打、18盗塁という堂々たる成績でナ・リーグ新人王を受賞している。

【次ページ】 不調のナショナルズ打線でハーパーがひとり気を吐く。

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