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豪州年間王者は逃したものの――。
33歳・小野伸二が過ごす充実の時。
text by
蘇芳あかねAkane Suo
photograph byAkane Suo
posted2013/04/22 13:10
今季は26試合に出場し8得点をあげ、来季もワンダラーズでプレーすることを決めた小野。「恩返しじゃないけど、また一緒に2年目の苦しさを戦いたいと思っているんで」とコメントしていた。
オーストラリアでは多くの人が教会へ出かけて静かなはずの4月21日、日曜日の午前中。Aリーグのグランド・ファイナルが行われるアリアンツ・スタジアムにほど近いシドニー・セントラル駅周辺のパブと歩道は、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズのサポーターで占拠され、警備の警官が多数出動するほどの事態となっていた。
4万5000人で満員となるスタジアムの3分の2は、小野伸二が言うところの「ちょっと浦和レッズに似た熱くて気持ちの良いサポーターたち」で埋まっていた。
今シーズン結成されたばかりのチームのサポーターたちだとは信じられないほど、熱狂的な風景だった。
10チームでリーグ戦が行われているオーストラリアのプロサッカーリーグである「Aリーグ」。2012-2013の今シーズンは、小野伸二擁する新クラブ、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズがクラブ創設年にしてシーズン優勝を果たしていた。
Aリーグは、日本のプロ野球と同様、シーズン優勝が決定した後、上位チームによるプレーオフがあり、そこで正式に年間王者を決める。今季の場合、リーグ戦上位6位までのチームで戦うプレーオフとなる“ファイナルシリーズ”の決勝戦「グランド・ファイナル」は、リーグ戦1位のウェスタン・シドニー・ワンダラーズと、2位のセントラル・コースト・マリナーズの対戦となっていた。
ちなみに……ワンダラーズの監督トニー・ポポビッチとマリナーズの監督グラハム・アーノルドは、選手時代にはともにサンフレッチェ広島でプレーしたことがある親日家でもある。
集中豪雨でひどく荒れたピッチ上、両チームのパスがつながらず。
前日シドニーを襲った集中豪雨の影響でひどく荒れたピッチのせいか、両チームともパスがまったくつながらなかったこの試合。ワンダラーズは、両サイドから鋭く攻め上がるいつもの攻撃ができず苦戦を強いられた。
試合開始後の10分ほどは、両チームともに相手ゴール前にボールが届きもせず、中盤での争いに終始。そんな中、ワンダラーズの最初の得点機は前半19分のコーナーキックから。小野がスペースを作って、ゴール前に飛び込んだが、惜しくもシュートにはつながらず。逆に、前半終了目前の43分、一瞬のスキをついてマリナーズのセンターバック、パトリック・ズワンズワイクに、自身の今シーズン初となるゴールを決められてしまう。
その後は両者ともに決定機を欠く展開が続いたが、67分にワンダラーズのDFジェローム・ポレンツがマリナーズFWのダニエル・マクブリーンと自陣ゴール前で競り合う中でボールを腕に当ててしまい、PKを献上。この試合以前、2回連続でPKを外していたマクブリーンだったが、この貴重な追加点のチャンスをキッチリ決めて勝利を決定づけた。