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川崎Fで今なにが起こっているのか?
中村憲剛が語る深刻な不振の理由。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byDaiju Kitamura/AFLO
posted2013/04/16 11:05
風間監督は「やらなきゃいけないという決まり事を作り過ぎ。自由な発想で自信を持ち、楽にプレーしてほしい」とコメントしているが……。ピッチ上で指示を出す中村の肩にかかる期待は大きい。
中村が繰り返す、「もう一回、選手間で意志統一を」。
マリノス戦は前半、パスサッカーが完全に封じ込まれ、メンタルの落ち込みが危惧された。だが、後半、相手の運動量が落ちたにせよ、自分たちのサッカーをする時間をわずかながらも取り戻したので、メンタルに大きなダメージを受けている様子は見受けられなかった。ただ、このまま勝てない状態が続けば、やがて選手は自信を失い、監督のサッカーへの疑念も深まっていくだろう。
それに、まだ早い気もするが、データ的にも今の状況は看過できなくなってきているのも確かである。
昨年J2に降格したガンバ大阪の第6節までの成績は、1勝4敗1分けで勝ち点4だった。川崎は、それより勝ち点がさらに1少ない。ガンバは序盤の取りこぼしが響いて降格したが、このまま勝ち点を積み重ねることができないままだとシーズン終盤、相当厳しい残留争いに巻き込まれることになる。
「今の成績じゃ、そう言われてもしょうがない。今の成績は、自分たちの実力というか、自分たちが招いている結果だというのは間違いないですから。でも、そこで下を向いたら何もない。まずは、もう一回、選手間で意志統一をして、やっていかないと」
中村は、何度も「意志統一」という言葉を挙げ、厳しい表情を崩さなかった。
極端な不振で大きな岐路に立つ「風間サッカー理論」。
打つ手は、いくつかある。
チームが負けている時は、選手を入れ替えるのもひとつの手段だ。
例えば現在、ボランチの山本真希と大島僚太は運動量はあるが、相手にガツガツと行き、ボールを取りにいくタイプではない。今は、例えばボール奪取に長ける稲本潤一を起用し、士気を高めて戦うのもいいだろう。高さとフィジカルの強いパトリックをスタメン起用するのも戦術を徹底して戦うには、いいかもしれない。また、カウンター重視で、まずはしっかり守って先制点を奪われない現実的な戦い方も考えるべきだろう。
理想ばかり追い求めても内容や結果がついてこなければ、それは愚挙にしかならない。それでも理想のパスサッカーを確立するために今をその過程の痛みとして我慢するのか、それとも現実的にまず一勝を挙げることを目指して何かしらの策を講じて戦うのか。
今、風間サッカーは、大きな岐路に立っている。