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5冠王・萩野公介は“和製フェルプス”。
「伸びしろしかない」という強さの秘密。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byDaiju Kitamura/AFLO SPORT
posted2013/04/15 11:45
6冠には届かなかったことで、「疲れが残っていた」「力みが出た」と語った萩野。しかし、18歳での偉業は日本水泳史に残るものである。
圧倒的な強さの萩野。その成長の秘密とは?
小学生の頃から全国大会で次々に記録を塗り替えてきた萩野だが、実は苦い思いも味わってきた。中学2年のときには右膝半月板損傷で手術を受け、リハビリなどのため泳げない期間があった。高校2年のときは日本選手権で急性胃腸炎にかかり、世界選手権の代表を逃した。その後、体調管理の重要性などを学んだ。それらの経験も糧になっているだろう。
尋常ならざる心身のタフネスが土台にある上で、優れた技術力もあるのだ。
例えば背泳ぎで、スタート、あるいはターン後のバサロキックで他の選手よりも伸びることで分かるように、萩野は水中での動作に秀でている。そして水面の高い位置で泳ぐことができるから、水の抵抗が少ない。スタミナをロスすることなく進めることも、数多くの種目をこなせる理由である。
萩野は以前、こう語っていた。
「ロクテ、フェルプスのような強い選手になりたいです。どの種目でも勝てるのが強い選手だと思います」
ロクテは2011年の世界選手権での5冠、フェルプスは北京五輪での8冠など、多種目で活躍してきた選手たちだ。
世界選手権では8種目出場の可能性が。フェルプスばりの活躍も!?
ロンドンから8カ月あまり。
現在の姿を見れば、まさにフェルプスのように、多くの種目で世界のトップクラスの選手として活躍する将来を想像するのは、無謀なことではない。
「まだまだ課題もあるということで、水泳って面白いなと思いました」
大会を終えた萩野は、こうも口にしている。
「自分には伸びしろしかないと信じて、1回1回練習を頑張っていきたいと思います」
なによりも、当の本人が自分の可能性を信じている。
世界選手権では、今回出場して代表権を得た6種目、さらにリレーも含め、8種目に出場する可能性がある。大舞台でどのような泳ぎを見せるだろうか。