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日本の敗退とモリーナの頭脳。
~侍ジャパンを手玉にとった名捕手~ 

text by

芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byMLB Photos via Getty Images

posted2013/03/24 08:03

日本の敗退とモリーナの頭脳。~侍ジャパンを手玉にとった名捕手~<Number Web> photograph by MLB Photos via Getty Images

プエルトリコ投手陣を巧みにリードしたヤディア・モリーナ。昨季も打率.315、22本塁打と、勝負強いバッティングにも定評がある。

 第3回WBCの王者はドミニカに決まった。MVPはロビンソン・カノーだった。

 どちらも予想どおりだ。ただし、8戦無敗とは思わなかった。打線の破壊力は文句なしだったが、投手陣に不安があったからだ。その投手陣が通算1点台の防御率を残してゲームを引き締めたのだから、野球はわからない。

 敢闘賞を選ぶとしたら、やはりプエルトリコだろう。オランダやイタリアの善戦も光ったが、人口370万の小島の奮闘はやはり特筆に値する。

 近ごろはバレーボールやバスケットボールの人気に押されがちだが、プエルトリコはもともと野球の盛んな土地だ。ドミニカやベネズエラが台頭するまで、大リーグに進出するカリビアンといえば、だれもがプエルトリコの名を挙げた。ロベルト・クレメンテ、ロベルト・アロマー、バーニー・ウィリアムズ、カルロス・デルガド。大選手の名は数珠つなぎに出てくる。今度の大会でも、カルロス・ベルトランやアンヘル・パガンやアレックス・リオスが顔を見せた。どちらも、大リーグ好きには馴染み深い名前だ。

脆弱な投手陣を完璧にリードしたモリーナ。

 が、もっとすごい選手が出ていたことを忘れてはならない。

 ヤディア・モリーナだ。

 通称ヤディ・モリーナ。苗字からわかるとおり、モリーナ3兄弟の末弟だ。長兄のベンジーも次兄のホゼも優秀な捕手だった。が、もしかすると最大の才能はヤディではないか。所属するカーディナルスが'06年と'11年にワールドシリーズを制したのは、モリーナの力にあずかるところが大きい。

 そのモリーナが、準決勝の日本戦でも底光りを見せた。極端にいうなら、日本はモリーナひとりに敗れた。

 プエルトリコの投手陣は、お世辞にも強力とはいえない。いや、貧弱と決めつけても暴言のそしりを受けることはあるまい。日本戦の先発マリオ・サンチアゴ(28歳)はマイナーリーグ通算で36勝51敗の成績しか残していない。'12年は韓国のSKワイバーンズでコリア・シリーズに登板し、'13年はドジャースとマイナー契約を結んだ。まあその……あまり自慢できるキャリアではない。

【次ページ】 メジャー最高の捕手を前にした侍ジャパン打線は沈黙。

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ヤディエル・モリーナ

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