なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
期待の若手は加戸、中島、長船……。
アルガルベ杯で新なでしこの萌芽が。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byAFLO
posted2013/03/16 08:01
アルガルベ杯のノルウェー戦でなでしこジャパンとしてのデビューを飾った加戸。惜しくも0-2で負けたが、そのプレーには将来を期待させるものが。
加戸、中島、長船……期待の若手が少しずつ出てきた。
加戸由佳は、左右両サイドのDFをこなし、当たり負けもしない。もともとはFWだっただけに、オーバーラップのタイミングも的確だ。現在、なでしこ不動の右DFだった近賀ゆかりが膝の負傷のため離脱中だが、その穴を埋めるだけでなく、近賀の後継者としても期待が持てる。
あるいは左DFとして、鮫島と競わせてみるのも一案だろう。攻め上がりの頻度では鮫島に軍配が上がるが、守備力なら現時点でも加戸の方が安定感がある。経験を積ませればスケールの大きなサイドバックになれるであろう可能性を、彼女は出場した3試合で示してみせた。
また中島依美も、サイドMFとしてなかなかの働きをした。技術があって視野が広く、体は小さいながら簡単にボールを失わない。攻撃が停滞し、新たに起点やアクセントを加えたい時などに投入すると面白い存在ではないだろうか。
もう少し長い時間プレーさせてやりたかったのが、センターバックとして2試合に起用された長船加奈だ。初戦のノルウェー戦はフル出場したものの、中国との順位決定戦で負傷し途中退場してしまったのは、いかにももったいなかった。矢野喬子が昨シーズン限りで引退し、センターバックの層が薄くなっている今、一躍ポジション争いに名乗りを上げるチャンスだったのだが……。
長船は169センチと日本選手としては大柄ながら、俊足の持ち主でもある。現在、先発センターバックの一角を占める熊谷紗希は、前へ出てのインターセプトには強いが、マンマークやカバーリングで時々ポカが出る上、足もさほど速くない。対戦相手のタイプに応じて、熊谷と長船を使い分けられるようになれば、なでしこの守備に新たなオプションが加わることになる。だが今回のアルガルベ杯での長船は残念ながら、自らの能力をアピールするまでには至らなかった。
田中陽子は「大人のサッカー」にまず慣れるところから始めるべき。
最後に、開幕前から注目されていた田中陽子、田中美南のティーンエイジャー2人だが、評価を下すにはまだ時間が必要ではないだろうか。
田中陽は大会を通じて、フル代表レベルでのフィジカルコンタクトの弱さを突きつけられた格好だ。また、ボランチ起用時に積極的に前線へ出て行くのはいいのだが、仕事をする前の段階でボールを奪われてしまうことが少なくなかった。そうなると彼女の攻め上がりは逆に陣形バランスを崩し、守備の穴を作ってしまうことになる。彼女は昨年、所属クラブのINACでさえ出場機会が多くなかった。まずは自らの出番を増やし、『大人のサッカー』に慣れることから始めたいところだ。