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“アイスマン”ライコネンが逆転優勝!
F1開幕戦で繰り広げられた頭脳戦。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2013/03/18 11:30
レース後のコメントはアイスマンらしく「かなり単純だった。最も楽な優勝のひとつかもしれない」だった。以下順位はF・アロンソ、S・ベッテル、F・マッサ、L・ハミルトン、M・ウェバー、A・スーティル(以下省略)。
予選が雨。直前まで路面状況が読めなかった豪州GP。
市街地コースのアルバートパークは鈴鹿ほどタイヤに厳しくはない。しかし、今年のオーストラリアGPはいつも以上にタイヤの使い方が難しいレースとなった。それは土曜日に予選が順延となるほどの雨が降ったからである。
アルバートパークでレースが開催されるのは、年に1度だけ。コースとして使用される公園内の周回路は普段、市民が自由に通行できる一般道である。そのため、グランプリ初日となる金曜日は滑りやすいが、セッションが進むにつれて路面は大幅に向上する。
ところが、土曜日の予選が驟雨に見舞われ、さらに順延した日曜日午前中の予選も小雨が降る中、ほとんどウエットコンディションで行われたため、日曜日の午後5時からスタートするレースでの路面がどのような状態で始まり、どのように変化するのか、予測がつきにくかったのである。そのため、多くのチームが安全策とも言える3回ピットストップ作戦を敷く。
そんな中、ライコネンは奇策とも思えた2回ストップ作戦に手応えを感じていた。それは金曜日のフリー走行で、ライコネンは上位陣でもっとも長い連続周回をこなしていたからである。
ライコネンの技術を縁の下で支える名レースエンジニアの存在も。
もうひとつ、ライコネンには力強い味方が側にいた。
それは大逆転優勝となった'05年の鈴鹿で共に戦い、自分の走りをだれよりも良く知るマーク・スレードが今回もレースエンジニアとして、さまざまなアドバイスを送ってくれていたからである。
「金曜日のフリー走行で1セットのタイヤで20周以上を走ることができたときから、信じていたんだ。キミなら、2ストップが可能だと」と言うスレード。そして、そのスレードの期待に見事に応えたライコネン。
2人の歴代王者の予想を裏切ったが、この日アルバートパーク・サーキットに詰めかけた10万3000人のファンはアイスマンとそのレースエンジニアが採ったギャンブルを堪能していた。