セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
司法試験受験か試合出場か?
セリエAで起こった奇妙な騒動。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2013/03/07 10:30
監督命令に従わず、司法試験受験を断行したアタランタのグリエルモ・ステンダルド。
「司法試験の受験は7年間を費やしてきた夢の結晶」
世論の猛批判を受けたアタランタは、慌てて火消しに懸命となった。
監督コラントゥオノは「休暇申請は試合の数日前であまりに急だった」と釈明したが、実際にはクラブ幹部が1カ月も前に日程調整の協議をしていたことを明かし、ステンダルドに非はなかったことが証明された。杓子定規の指揮官は結局譲らず、「私にも大学へ通う娘がいるから勉学の大事さはわかるが、ステンダルドがチームの内規に従わなかった事実は事実。練習への遅刻と同等に扱う。以上!」と強引に幕を引いた。
練習と試合で心身を酷使する日々の中で、専門書を読み込み、資料を辿り、レポート作成に追われる。プロ生活と学業との両立がどれほど困難だったか、ステンダルドの苦労は想像に難くない。無事国家試験を終えたステンダルドは、「受験は7年間を費やしてきた夢の結晶だった。(受験日と重なったのが)残留決定戦でもない限り、1年に1度しかないチャンスをあきらめるわけにはいかなかった」と語っている。
ド派手な“悪童”だけがサッカー選手の代表ではない。
教育システムの差異がある以上、安易な比較はできないが、大卒選手が珍しくないJリーグとちがい、セリエAの“学士”選手は明らかに少数派だ。割合でいえば今季の登録選手中、0.8%にすぎない。
明治大卒の長友佑都(インテル)の他に、経済学部を卒業したFWボグダ二(シエナ)とDFキエッリーニ(ユベントス)が知られている。キエッリーニは『ユベントスFCをモデルとしたスポーツクラブの経営バランスシート研究』を卒論テーマに、ほぼ満点の好成績でトリノ大学を卒業した。
イタリアでは、今年1月の“アンダー24歳世代”の失業率が38.7%にも達した。若者の間では「大学は出たけれど」との嘆き節も聞かれるが、ヨーロッパでの“大卒”の肩書きは、日本のそれと比べてなお重みがちがう。
DFデシルベストリ(サンプドリア)は、イタリアの名門大学の一つ、サピエンツァ大学(ローマ)経済学部に籍を置き、トリノのイタリア代表DFオグボンナも法学を学ぶ。プロキャリアと並行しながら、将来のキャリア設計を考えている若手選手もきちんといる。迷彩カラーの高級車ベントレーをぶっ飛ばす悪童FWバロテッリ(ミラン)だけが、21世紀のサッカー選手の顔であるはずがない。