セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
司法試験受験か試合出場か?
セリエAで起こった奇妙な騒動。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2013/03/07 10:30
監督命令に従わず、司法試験受験を断行したアタランタのグリエルモ・ステンダルド。
“育成”の名門クラブはこの若い選手を応援すべきだった。
彼らはプロの世界に生きる以上、“本業に専念せよ”という批判もあるのは当然。しかし、不況を肌で知る大多数の一般ファンは、文武両道の重要度を理解し、ステンダルドの味方になった。アタランタは育成の名門として知られるクラブだけに、サッカーが別の将来への可能性を妨げるものではないことをむしろ率先して若者たちへ伝えるべきだった。
誰もがトッティやバロテッリのようになれるわけではない。才能だけで渡り合える天才プレーヤーは数あれど、「若い世代へ模範を示せたら」と言うステンダルドのような学業両立型プレーヤーも一般ファンへ勇気を与える存在であることは間違いない。
司法試験の結果発表の時期は近い。もし今回を逃しても、ステンダルドはあと数年もすれば、法の番人として第二のキャリアを歩み始めるだろう。ネクタイとスーツを着る日々が訪れるまで、異端児DFは残留を争うチームのゴールを守っている。