Number Do ExBACK NUMBER
『BORN TO RUN』の“走る民”を救え!
募金を求めて山手線一周ラン体験記。
text by
松山貴史Takashi Matsuyama
photograph byMiki Fukano
posted2013/02/16 08:00
節分にちなみ、鬼の扮装で山手線沿いをひた走る松山貴史くん(大学4年生)。胸にかかる襷には、「タラウマラのために 豆を下さい」の文字。
スタート地点の新宿駅で早くも募金に感謝!
<2月3日イベント当日>
リアリティーを出すためには、心も体も鬼にならないといけない!ということで(?)、目白にある寮から待ち合わせ場所の新宿駅までも、鬼のコスプレで行くことにする。
だが、のっけから恐らく日本女子大学の受験生であろう女子高生から黙殺されてしまう。別に目立ちたいわけではなかったが、ある程度のリアクションは期待していたのでショックを受ける。「愛の反対は無関心」……マザー・テレサの言葉の意味が身にしみて分かった。
スタート地点の新宿駅に着くと、なんとすでに何名かの参加者の方が待っていて下さっており、主旨に共感して、わざわざ募金だけしに来て下さった方もいた。1000円札が何枚かペットボトルの中に吸い込まれていく。何て幸先のいいスタートだろう。たった一人の鬼コスプレは罰ゲームだが、集団で走れば怖くない。こうして総勢7名で山手線一周ランが始まった。当面の問題は寒いこと。着ているのは薄い鬼コスプレ衣装とTシャツのみだから当たり前か。
“各駅で最低一人からは募金を”という鬼のようなルール。
新宿から新大久保へ。一般の人に「タラウマラの人々を支援する」ということを知ってもらうのは難しいと思っていた。もしかしたら伝わらないかもと頭では思いつつ、駅前にいた人におそるおそる募金のお願いをすると、快く募金して下さった。できるもんだ。
しかし、この順調なスタートのせいで、当初の予定は、“山手線の各駅を回り、募金を呼びかける(任意)”だったが、“各駅で最低一人からは募金をもらう”という鬼のようなルールが同行する鬼編集者のWさんによって急遽作られてしまう。残りは27駅、大丈夫だろうか……。
不安とは裏腹に、ほぼ100%の確率で募金の声かけは成功していく。これだけの人数で、鬼のコスプレをして山手線を走って回っているといえば、なんだか勢いに押されて募金してくれるのだ。撮影をしているカメラマンのFさんからは「格好が鬼だけにカツ◯ゲにみえる」という指摘もあったが、タラウマラの人々のためなので仕方ない。
参加者から「鬼ころし」2リットル紙パックの差し入れが……。
池袋駅の地下街を通り、鶯谷の風俗街も通過。田端の駅では子どもに豆を投げられたりもしたが、山手線の北側は駅間が狭いのでサクサク進む。
そろそろ喉が渇いたなと考えていたら、参加者のひとりがカバンのなかから「差し入れです」と「鬼ころし」というパックを取り出す。まさかの日本酒エイド!? おそるおそるWさんの顔色をうかがうと「行け」と目で合図を送ってくる。やれやれ。親切心を無下にはできないと覚悟を決め、2リットルの紙パックに口をつけると、中身はアクエリアスだった。……今日は参加者も侮れない。