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仙台育英、大阪桐蔭に死角はあるか!?
「投低打高」な春のセンバツを占う。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/02/06 10:30
昨年11月14日、明治神宮大会決勝の関西戦で12-4と圧勝して優勝を決めた仙台育英の選手たち。今春、東北勢は史上最多の5校が出場する。
3月22日からスタートする選抜甲子園大会の出場校が先月25日決まった。有力校を北から順に挙げてみよう。
仙台育英(宮城)……昨年秋の明治神宮大会の優勝校
常総学院(茨城)……内田靖人、吉沢岳志など昨年夏の甲子園メンバー6人が残る
浦和学院(埼玉)……秋季関東大会3連覇を達成した関東の王者
大阪桐蔭(大阪)……昨年春、夏の甲子園大会を制して史上初の3連覇を狙う
報徳学園(兵庫)……大阪桐蔭を昨年秋の近畿大会準決勝で8対0の大差で退ける
済美(愛媛)……2年生の本格派右腕・安楽智大を擁し'04年以来の選抜Vを狙う
選抜大会は打者の仕上がりが遅れることもあり「投高打低」になるのが普通だが、今年の有力校の顔ぶれを見ると「投低打高」になっている。各有力校にどんな選手がいるのか見ていこう。
走攻守揃った“稲葉2世”上林が仙台育英を引っ張る。
秋の王者・仙台育英を引っ張るのは走攻守3拍子が高いレベルで揃っている上林誠知(中堅手)だ。184cm、77kgという立派な体格を誇る右投げ左打ちで、実績、将来性とも現時点では大会ナンバーワンの強打者と言っていい。
明治神宮大会では3試合に出場し、13打数5安打(打率.385)、本塁打1、打点6を記録。大会タイ記録の19安打を放ち12対4で圧勝した関西との決勝戦では、3回に同点の2点タイムリー、6回には先頭打者で二塁打を放ったあと10点目の生還を果たすなど、ポイントゲッターとしてもチャンスメーカーとしても機能した。
この決勝戦より、さらに強打が際立ったのが準決勝の北照戦だろう。第3打席までは評判の技巧派左腕・大串和弥の徹底した変化球攻めに遭い、空振り三振、内野安打、遊撃失策と不発気味だった。そして3対1とリードした7回表の2死満塁の場面で4回目の打席が回ってきた。
初球が外角低めへの112キロ・カーブ(ストライク)、2球目が外角低めへの100キロ・チェンジアップ(ボール)と厳しいコースへの変化球が続き、3球目は内角寄りへの115キロのスライダー。これをフルスイングすればライト方向へのファールになるのが普通だが、押し込むようにバットを出すと、打球はファールゾーンに切れず、ライトポールを直撃する満塁ホームランになった。
この打ち方はWBC(ワールドベースボールクラシック)の日本代表候補・稲葉篤紀(日本ハム)にそっくり。夏の選手権でも“稲葉2世”の声は聞かれたが、秋になって形だけでなくテクニック的にも本物に近づいている。ちなみに、第3打席の遊撃手のエラーで出塁したときの一塁到達タイムは4.18秒。凡打性の当りでも力を抜かないところなど本当によく似ている。