REVERSE ANGLEBACK NUMBER
スーパーボウル兄弟決戦は兄の勝利。
弟の夢を奪った“えげつない”選択。
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/02/06 10:30
兄弟対決は兄の勝利。試合後、弟のジム・ハーボー(左)が兄のジョンを祝福。兄は試合前、「勝者に歓喜、敗者には落胆が待っている。試合後に弟と握手をしたり、抱き合ったりする姿は想像できない」とコメントしていた。
今年のスーパーボウルはいろいろあった。ボルティモア・レイブンズ(以下BAL)とサンフランシスコ・フォーティーナイナーズ(以下SF)の顔合わせになったが、両チームのヘッドコーチは兄弟。史上はじめての「骨肉の争い」である。加えてBALの名LB、レイ・ルイスがこの試合限りでの引退を表明していた。花道を飾れるかも注目。そしてSFのほうはシーズン途中からスターターに座った若いQBコリン・ケイパーニックがNFLの試合経験10試合あまりでトップに上り詰めるかも興味深かった。
試合もはじまってみると期待通りの盛りだくさんだった。第3QのはじめまではBALの一方的な攻勢。QBサックやパスインターセプトなど守備陣が奮闘し、キックオフリターンのタッチダウンも出て28対6とリードする。
ところが第3Qの8分過ぎに停電で34分試合が中断した後は様相が一変する。頭の中の電球も付け替えたみたいにSFのQBケイパーニックのパスが冴えて追い上げがはじまった。守備陣もQBサックを決めるなどSFに勢いが出てくる。
SFが取って、取って、取られて、第4Qでは一時は2点差まで行った。後半の好調ぶりを見るとSFの逆転は必至と思えたが、BALはFGで差を広げ、守備陣が残り2分からのゴール前5ヤードのピンチを守りきって12年ぶりの勝利をものにした。
第4Qの大詰めで見せた「えげつなさ」が勝敗を分けた。
ともに守備の強力なチームらしくサックが飛び出して攻守を一変させる場面があったし、攻撃もBALはQBジョー・フラッコの冷静なパスワーク、SFはケイパーニックのランなど見せ場も多かった。
勝負を分けたプレーはいくつもあげられる。
ターンオーバーが展開に影響したのはいうまでもない。第3Qにタッチダウンで2点差に迫ったSFがそのあとキックではなく2点を取って同点にするプレーを選んで失敗したのも微妙に響いた。一気に同点をねらうのは勢いからいえば当然かもしれないが、まだ第4Qもあることだし、確実にキックで1点を加えて、相手に心理的重圧をかけるほうが正解だったかもしれない。
だから、このプレーが勝敗を分けたと断言はできない。それよりも面白かったのは、最後の最後でBALが見せた「えげつない」プレー選択だ。