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スーパーボウル兄弟決戦は兄の勝利。
弟の夢を奪った“えげつない”選択。 

text by

阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2013/02/06 10:30

スーパーボウル兄弟決戦は兄の勝利。弟の夢を奪った“えげつない”選択。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

兄弟対決は兄の勝利。試合後、弟のジム・ハーボー(左)が兄のジョンを祝福。兄は試合前、「勝者に歓喜、敗者には落胆が待っている。試合後に弟と握手をしたり、抱き合ったりする姿は想像できない」とコメントしていた。

SFから大逆転の可能性を奪ったBALの堅実すぎる選択。

 SFが残り1分50秒のタッチダウンパスに失敗したあと、BALのほうは時間を使って攻め、パントを蹴る場面になった。

 残りは11秒。

 パントを受けたSFは逆転のリターンタッチダウンをねらうか、フェアキャッチにして、1回限りのパス攻撃に全てを託すか。いずれにしても限りなくわずかな可能性を追求するSFの攻撃が見られるものと多くの人は考えたはずだ。

 ところがBALのヘッドコーチ、ジョン・ハーボーはパントを蹴らせなかった。

 ボールを受けたパンターはエンドゾーンの中でうろうろして時間を稼ぎ、SFの守備陣に外に突き出された。セーフティでSFに2点が入る。しかし、この2点ほどむなしい得点はなかった。3点差に詰めはしたが、追いかけるためのプレータイムが残っていないのだ。

 BALのジョン・ハーボーは2点は与えても一発逆転はさせないというえげつないというか、相手からすれば(弟のチームだ!)、無力感しか残らないプレーコールを選択してスーパーボウルの大舞台を勝ちきった。

 ヘッドコーチの兄弟対決は兄が制した。

地道に歩んだ経歴が見せ場よりも確かな勝利を選ばせた。

 この兄弟、弟のジムがコルツなどでプレーしたスターQBだったのに対して、兄のジョンはNFLでプレーした経験がない。早くからアシスタントコーチの道を選び、さまざまなチームでコーチ経験を積んでヘッドコーチにまでなった。経歴は対照的だ。

 その経歴の違いが試合運びにも表れていた。

 兄のほうは大舞台だからといって特別な作戦、意表をつくプレーコールをすることはあまりなく、レギュラーシーズン、プレーオフの戦いをそのまま押し通した。

【次ページ】 兄弟で戦術の違いがクッキリと浮かび上がった理由。

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