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<箱根5区、ポスト柏原を探せ> 三度、「山の神」は現れるのか。 

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photograph byHitoshi Mochizuki(AJPS)

posted2012/12/20 06:01

<箱根5区、ポスト柏原を探せ> 三度、「山の神」は現れるのか。<Number Web> photograph by Hitoshi Mochizuki(AJPS)

柏原の走りを可能にしたものは何だったのか?

 では、その走りを可能にしたものは何だったのだろうか。金さんは、その独特のフォームに秘密が隠されているという。

「柏原のフォームの特徴はキックの強さと腕振りにあります。本人も『シューズがすぐダメになる』と言っていましたが、1歩1歩地面を蹴る力が強い。他の選手とは1歩の大きさがまったく違います」

 腕振りも大きなストライドを生み出すのに役立っているという。

「トップランナーの腕振りはリズムをとるだけというケースも多いんです。肩甲骨さえしっかり動いていればいいという考え方ですね。でも、柏原は腕を後方に引いたときに生まれる身体のねじれを利用してグイっと身体を前に持っていく。決してきれいなフォームとは言えませんが、山上りには向いてるんですね」

酒井監督が指摘する、その強靭な精神力。

 酒井監督が指摘するのは強靭な精神力だ。

「あの箱根の山で後先考えずに突っ込んでいけるのは凄いですよ。4年時は本人がペースを抑えたと言ってましたけど、最初の10kmのタイムが他の選手とは全然ちがいますから」

 その積極的な姿勢は箱根以外のレースなどでも一貫していたと言う。
「どのレースでもスタートから自然と1km2分45秒前後のタイムで入っていけたし、練習でも本能的に先頭で集団をひっぱっていた。『下がれ』って言ってもきかなかったくらいです(笑)。でも、そういった気持ちの強さがロードを走るときに生きてくるんです」

次代の“山の神”になれそうな選手はいるのだろうか?

 そんな柏原の後を継ぎ、次代の“山の神”になれそうな選手はいるのだろうか。

 その筆頭は早大・山本修平だろう。前回はルーキーながら5区に抜擢されると、柏原、明治大・大江啓貴に次ぐ区間3位。歴代でも7位に入る記録を出しており、今年も5区での起用が確実視されている。

 前回2位の大江も5区起用が濃厚だが、4年生ということもあり“山の神”に至る伸び代という意味では山本に期待が集まる。

 山本は愛知の進学校・時習館高出身。高校時代から注目を集める存在だったが、臙脂のユニフォームに憧れ、浪人を経て早大に入学したという異色の経歴の持ち主だ。今季も5000mと1万mで自己ベストを更新、ハーフマラソンでは1時間2分28秒という好記録を出すなど確実に成長を遂げてきた。

「山本も気持ちで走っていくタイプ」と酒井監督が指摘するように、柏原との共通点もある。前回同様、大江と競り合いながら前を追う展開になれば、箱根路に三度、“山の神”が現れるかもしれない。

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