フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER

「これからは2年前とは別人」――。
21歳の大人になった石川遼が進む道。 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byYUTAKA/AFLO

posted2012/11/21 10:30

「これからは2年前とは別人」――。21歳の大人になった石川遼が進む道。<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO

11月11日、三井住友VISA太平洋マスターズで2年ぶりの復活優勝を遂げ、最年少で10勝目を上げた石川。インタビューでは「今日もダメかなと思う自分がいて、優勝の味というか感触を忘れていたので不思議です」と目を潤ませながら語った。

この瞬間に勝ちを得るために決死の覚悟で放った一打。

 前回の優勝時は無邪気な19歳だった青年は、そうした今までにない不安や葛藤を乗り越え、21歳の大人の男となって三井住友VISA太平洋マスターズでの2年ぶりのツアー優勝にたどり着いた。

 この試合の最後の最後、石川が崩すことのなかった基本姿勢にもついに変化が生じた。

 松村道央に1打差に迫られて迎えた最終18番のパー5。フェアウエーからの2打目は安全に刻むことをせず、5番ウッドで池越えのグリーンを狙うリスクを冒した。これが先に2オンしていた松村よりも内側につく会心のショットとなり、優勝を大きくたぐり寄せたのだった。「松村さんが先にグリーンに乗せたのを見たときに、あれよりも不利な状況から3打目は打てないと思った。“勝負”としてそこはこだわった。あの2打目で、優勝が僕のほうに傾いてくれた気がする」

 今後のために積み上げた一打ではない。この瞬間に勝ちを得るために決死の覚悟で放った一打。そんなゾクゾクするようなショットを石川がついに見せたのである。

「これからは2年前の自分とは別人。新たな石川遼として全力で頑張りたい」

 まだ一打だけの覚醒。しかし、来季に向けた貴重な試金石となる一打だった。

理想を追求しながら、勝負にもこだわる――次のステップへ。

 米ツアーに本格参戦する来季は、メジャーの出場権も、翌年のシード権も保証されていない。来年4月のマスターズへの出場権もまだない。複数年シードを保持する日本での戦いとは違い、より結果が求められ、追い込まれる局面も出てくるだろう。

「現状では難しいけど、来年のマスターズのことはどう考えてる?」と聞いたら、石川はこう答えた。

「僕は目指してますね。年末の世界ランク50位以内(※石川は11月19日時点で77位)は厳しいだろうから、来年の1月から3月の間に米ツアーで優勝するか、それに近い成績を残さないとダメだと思ってる」

 理想を追求しながら、勝負にもこだわる。2年ぶりの優勝を機に、石川のゴルフはそろそろ次の段階へとステップアップしようとしている。

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