欧州サムライ戦記BACK NUMBER
ザックの辛辣なコメントに何を思う?
宇佐美貴史20歳が抱く野心と課題。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2012/11/10 08:02
17歳でガンバ大阪の公式戦デビューを果たすなど、早くからその才能が注目されてきた宇佐美だが、バイエルン・ミュンヘンでは不遇の日々を過ごした。今季、ホッフェンハイムでは中心選手として活躍、日本代表でも“ブレーク”の瞬間が待たれる。
「自分はリベリーのような選手になれる」
宇佐美は、ホッフェンハイムで確かな手ごたえを感じている。
「バイエルン戦のときは出来なかったですけど、それ以外は毎試合、単独で突破してスピードを変えたりとか、シュートまでもっていけている。突破力はかなり研ぎ澄まされてきています」
バッベル監督も、その能力をこうたたえている。
「彼の一対一での突破力のクオリティやシュート力の強さは素晴らしいものがあるし、彼は良いシュートを打てるんだ」
10月6日、古巣バイエルンとの対戦後には、チームとしても個人としても、現時点では差があることを認めたうえで、こう話していた。
「自分はリベリーのような選手になれるというか……。まだ20歳ですし、これからいろんな経験もできますし、彼を超えられるとも思います。やっぱり、あれくらいの選手にならないと。目指すところはああいうところだと思いましたね」
また、第10節終了時点では全試合に出場して2ゴールを決めているが、それでは少なすぎると前置きしたうえでこう話す。
「究極にいえば、チャンスを全部決めれていれば(開幕から得点王レースをけん引する)マンジュキッチ(8ゴール)くらい行っていると思う」
宇佐美は自らに足りないものに気がついている。
宇佐美が能力のない選手であれば、ザッケローニ監督がメディアを通して厳しい意見を語ることなどありえない。あるいは、宇佐美の能力を評価していないのであれば、チームに呼ぶこともないだろう。とすれば、あとは宇佐美が持てる力を常に発揮できるようにするだけだ。20歳の若者は、こう断言する。
「(ザッケローニ監督は)自分に足りていない部分があるからああ言ったんだと思いますし。でも、その足りていない部分というのは、これからの意識次第ですから。本気で取り組めばついてくるところだと思うのでね」
宇佐美は自らに足りないものに気がついている。上に行く道が見えない者、どうすれば成長できるのか気がついていない者より、一歩も二歩も先を行っているのだ。
あとは、それを実行に移せるかどうか。簡単なようで難しくもあり、難しいようで簡単かもしれないこの課題に、宇佐美はどのように取り組んでいくのか。そこがいま、問われているのである。