日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
<特別インタビュー>
オマーン戦直前に中村憲剛が明かす、
欧州遠征の“手ごたえ”と“課題”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2012/11/13 10:31
欧州遠征のフランス、ブラジル2連戦にトップ下で先発出場。オマーン戦を約1週間後に控え、強豪との試合の感触を語った。
パウリーニョのミドルシュートで王国は一変した。
積極的な守備によってラインを高く、全体をコンパクトに保ち、高い位置からスピーディーなパスワークでゴール前に迫った。
前半2分、中村のポストプレーから遠藤、長谷部と回り、内田篤人のクロスボールに中村がヘディングで合わせようとした場面があった。ボールは中村の頭上を越えたが、「今のイメージだよ」と言うように彼は右手の親指を突き上げた。前半8分にもボールを回しながら押し上げていって、最後は本田がミドルシュートを放っている。ブラジルが様子見であったとはいえ、王国の“いらつき度”が増していくことを選手たちは感じ取っていた。
しかしトーキックで決めたパウリーニョのミドルシュートによって流れは一変する。
中村が振り返る。
「僕はちょうど後ろからあのシュートを見る形になったのですが、トーキックであの距離から打つとは思わなかったし、あれを決めてしまうあたりがブラジル。あの1点でブラジルから慌てた感じがなくなった」
ブラジルはブロックをつくってカウンターを狙い、ボランチのラミレスが最終ラインまで下がることで日本のプレスも効かなくなった。迅速かつ的確な修正力には中村も驚くほかなかった。
「相手は日本のパス回しを読んでペナルティーエリア付近でブロックをつくって、そこでボールを獲ってカウンターという狙いを1点獲ってから明確にしてきました。チアゴ・シウバはシンプルにネイマールやフッキに長いボールを蹴ってきて、最初は跳ね返したり、人数かけて獲ったりもできたけど、それが効いてきて途中からは彼らにガッと振り向かれるようになった。隙を突くのがうまかったし、ブラジルには様々な迫力がありました。空いたところに入ってくる迫力、前に出ていく迫力、守備で戻らなきゃならないときのスピードを含めて守備の迫力もあった」
フィジカルに劣る中村がブラジルと対等に勝負するには。
それでも中村は前半16分、本田からフリーでパスを受けてそこから香川にスルーパスを送り、決定的な場面をつくっている。
これは香川との呼吸が合わずに残念ながらオフサイドの判定。ボランチの近くまで下りるなどしてリズムをつくろうとしたが、0-2で折り返した前半だけで悔しい交代となった。中村自身、フィジカル勝負となると持ち味を発揮できずに苦しんだことは確か。だが「交代させられるのは自分の力がないから。もちろん悪いのは自分。でも欲を言えば、もうちょっとやってみたかった」と本音を漏らす。
「オフサイドになりましたけど、ああいうポジション取りをして前を向いて前にボールを出すという自分の特徴をもっと出していきたかった。相手の間に入ってフリーでボールを受けられれば、相手のサイズ、スピードは関係なくなるんで。あのレベルと戦ってもフリーで受けられることができたのは自分にとっては収穫でした。
それと戦ってみて思ったのは、自分も含めて斜めに走って、ラインをブレイクする前線の動きがあってもよかった、ということ。3人がボールに寄っていって、1人が裏に出ようとするだけでラインを下げさせることができますから。それこそバルサじゃないけど、サンチェスやペドロが走ってメッシやセスクにスペースを空けたりするような感じで」