REVERSE ANGLEBACK NUMBER
絶対に失敗しない男・松本哲也。
日本シリーズで見せた小兵の意地。
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/11/07 10:30
日本シリーズでの6犠打は2006年の日本ハム田中賢介と並ぶシリーズタイ記録。
失敗が許されないプレーをすべて成功させた松本。
今年の日本シリーズを見ると、松本哲也はそうしたうまくゆかなければ失敗を追及されるプレーをことごとく成功させた。
その多くは地味なものだ。
バントはもちろん、捕手の送球を邪魔するような本塁へのスライディングなども、まあ、うまかったですね、ぐらいで片づけられる。だが、それをきっちりやるかどうかで、チームの勝敗は大きく左右される。
小兵が小兵なりに考えた鉄則――「絶対に失敗しないこと」。
松本は168cm、66kgとプロの選手の中では際立って小柄だ。小兵のサンプルみたいな選手。
育成出身で新人王になったが、去年は不調で今年も出場は83試合。俊敏ではあっても特別な肉体的才能が与えられているとは思えない。そうした選手がプロで生きていくために、なにをしなければならないか。おそらく松本はそのことを考え、自分を磨いたのだろう。
失敗すればとがめられるプレーで、絶対に失敗しないこと。
これは特別な肉体的才能は必要ではなく、根気強く練習して習熟できる技である。それを磨いたのではないか。それが大舞台で生きた。
それにしても、こんなに失敗しない男が、シーズンでは80試合あまりの出場にとどまった。こういう選手がレギュラーになれないのだから、ジャイアンツの戦力の大きさがわかる。
日本一は必然だったか。