ゴルフトーナメント通信BACK NUMBER
石川、池田ら若手を驚かせた円熟の技。
ツアー選手権を制した宮本勝昌の矜持。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph bySports Graphic Number
posted2010/06/09 10:30
メジャーと呼ばれるような大会はいつも選手に最大限の忍耐力を要求する。
それは時に理不尽なほどに厳しく、だからこそ、その責め苦に耐え抜いた選手は一流プレーヤーと認められる。国内ツアーでは単なる1勝以上の重みを持つものとして、優勝者には長期シードを与えられるのである。
6月6日まで茨城県の宍戸ヒルズカントリークラブで行われた「日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills」は、まさにメジャーに相応しい厳しい戦いとなった。
ラフの深さこそ例年ほどではなかったが、大会前に続いた晴天はメジャーが求めるのにふさわしい硬く締まったグリーンを作り上げた。コースの戦略性の高さが、その難しさに拍車をかけ、最終的にアンダーパーは3人しか残らなかった。
降り止まぬ雨に振り回された石川遼。
たとえばカットラインぎりぎりで予選を通過した池田勇太は「ナイスショットでもグリーンに止まらないのはどうかと思うよ」と嘆き節一辺倒。同じように多くの選手が辛抱しきれずに次々とスコアを落としていった。
予選ラウンドが終わる頃には違う困難が訪れた。
2日目の夕方から雨が降り始め、硬く乾いたグリーンを少しは柔らかく、止まりやすくしてくれた。しかし、選手にとって恵みになるかに見えたこの雨も、メジャーの厳しさを増すものでしかなかったのである。
次第に強さを増した雨は翌朝まで激しく降り続き、コースコンディションの極度の悪化によって3日目のスタートは4時間近く遅れる事態となった。晴天が訪れてから始まった第3ラウンドも、再び空を覆った雷雨によって2時間もの中断が入ることに。
延々と待たされればプレーのリズムは変わる。見えない部分で体力も消耗する。天候が変わればコースコンディションも変化する。ここで音を上げたのは石川遼だった。
雨で濡れたグリーンのコンディションを読み切れず。
メジャー最年少優勝を目指す石川は予選ラウンドを終えて2位。いつものように大ギャラリーを引き連れて快調なプレーを続けていた。しかし、雷雨中断からの再開後はパッティングにズレが生じてしまっていた。
にわか雨でたっぷりと濡れたグリーンはすっかりその性格を変えており、石川のタッチはまったく合わなくなった。バーディーパットは打てども打てどもショートするばかり。
イライラを募らせた挙げ句、3パットによる痛恨のダブルボギーを叩いて「グリーンの変化についていけなくて……昨日まで届いていたパットがあと10センチ届かなくなった。最後はキレちゃって、ちょっと情けなかった」と肩を落とした。18歳の賞金王もメジャーの過酷さにふるい落とされ、優勝争いから脱落していった。