ゴルフトーナメント通信BACK NUMBER
石川、池田ら若手を驚かせた円熟の技。
ツアー選手権を制した宮本勝昌の矜持。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph bySports Graphic Number
posted2010/06/09 10:30
平常心を失った宮本を救った大ギャラリーの応援。
今大会は、最終日の1万3956人、4日間の合計ギャラリー数も大会史上最多記録を更新した。それは宮本が会長として2年間ツアーに尽力してきた成果でもあった。
17番でこの日3つ目となるダブルボギーを叩き、2位といよいよ2打差まで縮まった。平常心を失って18番へ向かう宮本の背中を、その大ギャラリーが後押ししてくれた。
「頑張れ! じゃなくて、あと少しだ! みたいな感じでした。ふらふらのマラソン選手に沿道の方が声をかけてくれてる心境でしたね」
最終ホールは歯を食いしばってバーディーを奪い、ギャラリーの大きな拍手に包まれてゴールテープを切ったのだった。
メジャーの難セッティングに立ち向かう苦しさ、めまぐるしく変わるコンディションに対応する難しさ、優勝争いの息詰まる緊張感にも打ち勝った。選手会長の重責と職務をこなし、会長職と選手のジレンマを抱えた2年間も乗り越えた。そしてつかみ取った4度目のメジャー優勝。
「優勝をずっと意識しながらプレーしていた。そういった意味では価値ある優勝。自分で勝ち取ったという感じがします。もしかしたら今までで一番うれしい優勝かもしれない」
4日間首位を明け渡すことなくツアープロの頂点に立った。18番グリーンで宮本の瞳に浮かんだのはあらゆる困難に耐え忍んだ男の涙だった。