フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
「悪魔」に取り憑かれた丸山茂樹――。
あのスマイルを再び取り戻せるか?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO SPORTS
posted2012/10/11 10:30
キヤノンオープンでは深堀圭一郎のアドバイスもあり、3日目を69の好スコアで終えたものの、最終日で崩れ、3年ぶりの優勝ならず。
43歳の誕生日となる9月12日のことだった。
丸山茂樹の携帯電話に海外からの着信があった。かけてきたのは来年のプレジデンツ・カップで世界選抜の主将を務めるニック・プライス。米ツアー時代から良き友人であった丸山に対して、自らのサポート役としての副将就任をオファーしてきたのだった。
日本ツアーにスポット参戦していた今田竜二とちょうど一緒にいた丸山は、携帯電話をスピーカーモードに切り替え、今田を通訳代わりにプライスの話をじっくりと聞いた。
プレジデンツ・カップは2年に1回行われる世界選抜(欧州を除く)と米国選抜の団体対抗戦だ。今回初めて主将を務めるプライスは、'98年と'00年大会で選手として一緒に戦った丸山の活躍をよく覚えていた。「ユーモアのセンスにあふれた人物」と丸山の明るい性格がチームにもたらす影響を考え、そして近年の世界選抜に増えてきたアジア選手のまとめ役として白羽の矢を立てたのだった。
選手ではなくチーム首脳としての参加はアジア初の快挙。
だが、丸山はその重みを理解しつつも即答はできなかった。いや、大切さを分かっているからこそ不安に感じた。
「大役だなとは思ったけど、俺でいいのかなって考えた。現状を思うと、自分の中では過去に残してきた功績も全て真っ白になってしまってるんでね。昔のマルちゃんだったら、選手として出てやるぜ! と言いたいところだけど、今は全くそんな気にはなれない」
試合が始まると丸山の前に現れる「悪魔」の正体とは。
丸山の言う現状とは何か。
'08年を最後に3勝を挙げた米ツアーから撤退。'09年の日本シリーズで勝って以降は日本ツアーでも優勝から遠ざかり、昨季の獲得賞金はわずか244万円、今季も10月のキヤノンオープンを迎えた時点で133万円余りという現状である。
「体の不調からショットが曲がり始めて、曲がりがトラウマになってティーショットにちょっとイップス症状が出ている。ラフが深いなとか曲げちゃいけないと思うとさらに悪循環。イヤだなと思ったときにはダウンスイングでパチンとノイズが体に走るんで、それが悩みのタネになっている」
丸山はそれを「悪魔」と表現した。
練習日やプロアマなら問題はない。しかし、悪魔は決まったように試合が始まると現れる。
「プロアマまでは一流プロでやってるんだけどね。朝の練習場でいい球を打っていても、ティーグラウンドで名前を呼ばれた瞬間に、あれ? ってなる。悪魔がこっちへ来いって呼び寄せるんだ」