フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
「悪魔」に取り憑かれた丸山茂樹――。
あのスマイルを再び取り戻せるか?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO SPORTS
posted2012/10/11 10:30
キヤノンオープンでは深堀圭一郎のアドバイスもあり、3日目を69の好スコアで終えたものの、最終日で崩れ、3年ぶりの優勝ならず。
身体をむしばむ古傷の痛みがイップス症状の遠因に。
初めて症状が出たのは米ツアーにいた'05年頃だったという。非力な丸山がパワフルな海外勢に対抗しようと必死にドライバーを振っていた頃だ。
「積み重なったものなんだろうね。パターは外れても1打で済むけど、向こうのコースは池も多いからドライバーでミスすると3打、4打のミスになる。打てば池、また打っても池でダボ、トリプル……」
米ツアーのシードを失い、日本に戻ってくると、徐々に症状は治まってきた。だが、ケガをきっかけに再び悪魔が舞い戻ってきた。昨季開幕前の右足ふくらはぎの筋断裂、腰痛やひざ痛、さらに現在は左手親指付け根の慢性亜脱臼と丸山は満身創痍だ。
深いラフなどで患部に痛みが走れば、それが頭のどこかに引っかかり、悪魔を呼び寄せるきっかけになってしまう。その怯えがまた無用な緊張感を生む。コースと戦う以前に体に巣食う悪魔と戦わなくてはならない。
「ミルウォーキーでのパット(米ツアー初優勝を決めたプレーオフのパット)も緊張したけど、ああいう緊張感とは違う。いい緊張じゃなくて、NHKのど自慢でマイクが震えている人を見るような感じかな」
ほんの10年前までは米国のまぶしい太陽を浴び、満開の輝きを放っていたマルちゃんスマイル。しかし、時間が経つにつれて、その光が作り出す深い影にのみこまれていった。そして、今も抜け出せずにいる。
特別シード権が切れる再来年、丸山は選択を迫られる。
賞金シードが確保できなければ、丸山の日本でのシードは今季までで切れる。来季は生涯獲得賞金による特別シードが1回だけ使えるものの、再来年のシード復帰は容易ではないだろう。
「特別シードが終わったときに自分はQT(出場権を懸けた予選会)にいけるのかなと考えてしまう。だとすると自分の道は2つしかないかな。この病気が治らなければ、そっちにいくしかないかな」
今週は大丈夫だろうかと期待を抱いて試合に臨んでも毎週のように打ちのめされる。9月のANAオープンのように初日に68を出したかと思えば、翌日に80を叩いて予選落ちしたこともあった。そんな日々の繰り返しに、気力も限界に近づいてきた。
丸山が言う「2つ」とはつまり、自力でシードを確保するか、あと1年あまりで引退するかということだ。