フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
「悪魔」に取り憑かれた丸山茂樹――。
あのスマイルを再び取り戻せるか?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO SPORTS
posted2012/10/11 10:30
キヤノンオープンでは深堀圭一郎のアドバイスもあり、3日目を69の好スコアで終えたものの、最終日で崩れ、3年ぶりの優勝ならず。
盟友・深堀圭一郎のひと言が丸山の心を動かした。
プライスから副将就任のオファーを受けた丸山は、この大役を務めていいものかを親しい関係者に相談した。その1人が同世代の深堀圭一郎である。
深堀も丸山同様に賞金シードを失い、今季は生涯獲得賞金による特別シードで参戦している。そして、5月の日本プロで2位となってシード復帰を決めた。そのときに真っ先に祝福の電話をくれたのが丸山だった。
深堀いわく2人の関係は「仲間、ライバル、ベストフレンド」。そんな深堀に丸山はこう言って苦悩をもらしたという。
「何十年と第一線でやってきたのに、今はみじめで、恥ずかしいし、ゴルフをやるのが苦しい部分もある」
だが、深堀はこう言って説得した。
「今のツアーでは若い選手の活躍に目がいきがちだけど、マルの歩いてきた道は誰もマネできないものだよ。その偉大な功績を評価してもらってるんだから、胸を張って、何も恥じることはない。僕は副将のオファーを素直に受けていいと思うし、受けないといけないと思う」
結局、丸山は数日してからプライスにオファーを受諾すると連絡した。
「いろいろな人が、自分がやってきたことを振り返らせてくれた」
そして、深堀にはこう伝えたという。
「長く恩恵を受けさせてくれたゴルフ界に対しての自分の使命だと思う」
「悪魔」につきまとわれる丸山に笑顔が戻る日は……。
副将就任が発表された週のキヤノンオープン。丸山は初日を4位と好発進。2日目を終えて2位に浮上し、最終日を5位で迎えた。「何かが変わったわけじゃない」と言いつつも、一発逆転でのシード確保すら予感させる力闘を見せた。
しかし、最終日の後半に惜しくも崩れて22位。再び悪魔にもてあそばれた丸山は「しょうがないね。発病しちゃったね。きのうまでの3日間は優勝争いを満喫できたよ」と力ない笑顔を浮かべた。
この大会でも賞金は141万円にとどまった。プレジデンツ・カップの副将就任も輝くスマイルを取り戻せる魔法とはならなかった。もちろん丸山自身も劇的に状況を変える魔法など期待していないだろう。
支えとなるのはアイアンショットとショートゲーム、そして使命感のみ。どこか影の差したスマイルを浮かべながら、丸山は苦しい戦いを続けている。