フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
フィギュア、ジャパンオープンを総括。
浅田、高橋ら、それぞれの今季開幕。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2012/10/09 11:55
日本チーム2年ぶりの優勝となったジャパンオープン。10月19日のアメリカ大会からいよいよグランプリシリーズが始まる。
小塚崇彦は、正統派クラシックで質の高い滑りを披露。
小塚崇彦の新フリーは、マリアナ・ズエヴァ振付によるサン・サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」だった。出だしの4トウループは着氷が前のめりになったが耐えて、回転も認定された。2度目の4トウループでは転倒したが、その後3アクセルは2回きれいに決めている。久しぶりの正統派クラシック音楽で質の高い滑りをたっぷりと見せた。「いい方向に進んでいる。去年はあまりいいシーズンではなく、評価も下がり気味だった。そんな中で、今回のような演技を毎回見せていくことができればと思う」と語った。
高橋、小塚ともにフリーでは4回転を2度入れる構成で、いよいよソチ五輪に向けての調整が着実に進んでいることを実感させた。
世界王者パトリック・チャン絶不調の理由とは?
驚いたのは、世界王者のパトリック・チャンが6人中6位に終わったことである。オペラ「ラ・ボエム」を振付けたのは、長年彼を育ててきたローリー・ニコルではなく、デイビッド・ウィルソンだった。出だしの4トウループで2回続けて派手に転び、3アクセル、3ルッツと合計4回の転倒。成功した3回転は2つだけという、普段の彼からは考えられない演技だった。怪我でもあったのかと訊くと、チャンは否定した。
「ここに来るまでのトレーニングは順調だった。でも5年もついて体に馴染んでいたローリーの振付から新しいものに変えて、不安要素があったことは間違いない。それが試合にすべて出てしまったのだと思う。自分はもともと変化への対応が得手ではない」と会見で語った。「でもこの試合でこういうことが起きたおかげで、気持ちをリセットしてスケートカナダへの準備ができる」とあくまでポジティブな言葉で締めくくったのは彼らしい。
原因はコーチではないことを強調するチャンだが……。
チャンは先シーズンの終わり、コーチのクリスティ・クラールとも師弟関係を解消しており、現在彼を指導しているのはダンスコーチのキャシー・ジョンソンである。体の使い方の指導がうまく、彼女のアドバイスによって4回転の成功率が上がったという過去もあり、チャンは絶大な信頼をよせている。「キャシーとのトレーニングはとてもうまくいっている。コミュニケーションもうまく取れるし、こちらが不調なときも理解してくれる」と、原因はコーチではないことを強調した。
だがもともとスケート・コーチではないジョンソンに、選手の不調を乗り切らせるノウハウがあるかどうかはわからない。それでも、チャンほどの実力があれば、シーズン半ばまでには巻き返しを図ってくるだろう。新たにサルコウとフリップの4回転も練習中で、今シーズン中には試合に取り入れる予定だというから、日本勢も気を緩めることはできない。